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21/02/26 司修の挿画原画としてのコラージュ作品一挙入荷!

■今週は22日(月)にカーゴ9台分のご蔵書やポスターをお客様宅の書庫より搬出、昨日29日(金)の市場に出品すべく火曜日以降、金曜午前中いっぱいまで、連日仕分けに明け暮れました。いまはまだ店内に来週出品分が残っており混乱の極みといった体ではありますが、明日土曜日は通常営業に。そして来週はまた週3日で営業いたします。
久方ぶりに連日肉体労働に明け暮れてみるともはやヘロヘロ。さすがは還暦目前。
色々とご紹介したい商品はあるものの気力はもはや時間の問題 … というわけで今週の新着品はひとつだけに。
推理小説で知られる作家・三好徹のエッセイの挿絵の原画=司修によるコラージュ作品が相当量まとまって入荷しました。
エッセイのタイトルは「真夜中の散歩」。調べて下さった方からの情報によれば、昭和56(1981)年10月から翌年12月まで『週刊宝石』に連載された作品で、後に書籍化されています。
書籍のあとがきには、
「雑誌を手にとるたびに、司さんのすばらしいイラストを楽しませていただいた。この前衛的なイラストはこういうコラムとしては従来になかった型破りなもので読者も目をみはったことであろう。」
とのコメントがあるとのこと。 

今回入荷したのは、いかにも挿画(=コマ絵)風の小ぶりな作品二十数点と、雑誌の扉や書籍に使えそうな大き目の作品7点。書籍化に際しての装丁プランのスケッチ2点と「カッパの本 光文社」と印刷され「司修 生原」と書き込みのある専用封筒1点がついてきました。
司修と云えば暗い印象の版画作品が思い出され、コラージュというのは意外でしたが、よくよく考えてみれば、どこか幻想的な作風とコラージュという技法とでは、そもそも相性が悪くないはずがなく、作品はご覧の通り。
素材はいずれも雑誌や新聞等、19世紀末~20世紀初頭の印刷物の現物を利用したようですが、なかには拡大倍率や画質をこまやかに考慮してか、古い銅版画を写真の印画紙にプリントして、その上にコラージュを施したものなども。
版下として入稿した原画なので、指定を書き込んだトレーシングペーパーがついており、紙モノ好きにはポイント追加もできそうですが、レイアウト用紙に多用されたアラビアゴムが茶色のシミとなってしみ出しているのは返す返すも惜しまれます。
手作業で切り貼りしたレイアウト用紙というのが消滅した21世紀、それも含めて往時の痕跡ではありますが。
数え直す必要はあるものの、多分、連載中の全作品がそろっていそうな勢いの点数ですが、バラ売りいたします。
よい作品は早い者勝ちということでご理解いただければ幸甚に存じます。
このあとまだ気力があればFacebookにもう少しよく分かるような画像でアップしよう…したい…と思いますが、年寄りの気力がどこまでもつものやら。
あ! もうひとつ云っておきますが、この手のコラージュの素材に事欠かないのもエフェメラ専門店としての小店のささやかな強みではあります。

今週は斜め読みの時間もなく、かわって店主本人がいまにも斜めになっちゃいそうです。
* 左斜め上の図版参照。斜め尽くしの2021年2月末となりました。
 

 

21/02/20 印刷したてのような『死刑宣告』第二版 極美本 ! 新高マンガ文庫『バクダン小僧』は25冊!

■来週の営業のお知らせを手短に。来週はお客さまよりご依頼いただいた市場への大量出品にあたり 店の営業は2月23日(火)と27日(土)の12時~19時とさせていただきます。普段なら営業日にあたる25日(木)は休業とさせていただきます。どうかご注意のほどお願い申し上げます。

詩人で「萩原」と云えば「朔太郎」というのが通り相場で、同じ萩原でも「恭次郎」なんて云う人が居るなんてことを知ったのは、古本屋になって後数年経った頃のことでした。
以来この20年ほどの間、「萩原恭次郎」という名前は、『マヴォ』という雑誌発行で知られる大正時代の前衛芸術家グループのメンバーであり、日本を代表するダダイスト集団として位置づけられることになるマヴォイストのひとりとして、小店にとっては純文学カテゴリーにある朔太郎よりも、より近しく意識し続けてきた名前です。
萩原恭次郎の代表作のひとつ『死刑宣告』の2版(再版 大正15=1926年発行)が再入荷いたしました。小店では実に6年半ぶりの入荷となります。
今週の日曜~月曜の2日にわたって開かれた市場で、何故か数千円の差で負けが続いて追い込まれ、赤い緋毛氈の敷かれた最終改札台の上のこの1冊に、とりあえず本気の札で臨むことになったというのが入荷までの正直な経緯ではあるのですが、しかし! 今回入荷した『死刑宣告』はこれ以上望むべくもない極美品(元パラ付き!)で、本気で臨む価値ありと見ました。
これだけの美本、逃せば二度と手にすることはありません。その状態があまりに完璧すぎて真正の元版なのか心配のあまり(後述の通りオリジナルしかないのに)、活版印刷によって生じた印圧を全ページ指で触って確かめてしまいました。いま考えるとアホみたいですが本当のお話し。
函には背の僅かな退色や平と角の僅かな傷など多少の傷が認められますが、本体に関しては1ページ・1点たりとも焼けもシミも傷もなく、表紙のエナメル部分の欠けもスレもなく、どこからどうみても傷一つ見つからない完璧な状態です。
当HPをご覧のみなさまには、いまさら云わずもがなですが、『死刑宣告』第2版=再販は初版と函のデザインが異なる他、再版では扉にも「再版」と記載、また、恭次郎による「第二版の序」4Pが追加収録されています。初版と異なる意匠と内容によって、コレクターや研究者・アーカイブなどにとっては、初版と同時に二版を所有する意味が付加される結果となりました。ちなみに、初版は忠実に復刻した複製品がありますが、再版については複製がつくられていないため、第二版は刊行当時のオリジナルしか存在しません。
これもまた云わずもがなですが、この本の最大の魅力はダダイスト萩原恭次郎による視覚詩への試みと、岡田龍夫によるリノカット15点が収められていること。表紙ももちろんリノカットです。 

リノカットとは、この当時、新素材として床材などに使われ始めた「リノリウム」を版として利用した版画の一種。スミベタ部分をよく見るとカッターマットにみられるような縦横の細かい目が認められます。
リノカットのオリジナルは岡田龍夫15作の他、戸田達雄、高見沢路直(=田河水泡!)、矢橋公麿など三十余点を所収。また、村山知義、柳瀬正夢、タトリンなど8点の写真版も。視覚的な試みとしての萩原の詩とも相俟って、いま見ても驚くばかりのモダンで前衛的で視覚的な詩集となっています。
ここ5~6年の間、戦前日本のモダニズムの文脈に注がれた海外での関心の高まりにより、関係する書籍や印刷物、なかでもマヴォ関係は高騰が続き、何しろ最初に売った『死刑宣告』は函欠けとは云え初版9万円でも値切られたという記憶が消えない小店には年々縁遠くなるばかりの『死刑宣告』でしたが、この間落札できなかった分のくやしさを極上の状態にかえて取り戻すことができたように思います。

■ドロップと云えばサクマか新高。これは小店店主が子どもの頃のジョーシキでして、今回のマンガ文庫入荷まで新高製菓がすでになくなっているとは思いもよりませんでした。云われてみればとんと見かけなくなったような ……
それはさておき。新高製菓学芸部発行、西川コーゾー作・画『新高マンガ文庫 バクダン小僧』が入荷しました。昭和9~10(1934~35)年月刊発行内、第1号~19号、31号~36号の25冊。全篇、バクダン小僧を主人公とする一話完結の連作漫画です。
製菓企業には明治や森永など、宣伝に秀でた企業が多く、ノベルティも多数ありますが、新高製菓のこの手の印刷物を扱うのはこれが初めてだと思います。
作者の西川コーゾーという名前をググってみると、西川鋼蔵という人のことについて書いたサイトが出てきました。読めば西川のご子息にあたる方が書かれたブログで、西川鋼蔵とその家族が戦争によっていかに翻弄されたか、一読直ちにお分かりいただけるかと。
http://nishikawasan.sakura.ne.jp/az/father.htm
西川家は焼失、新高製菓も消失したいま、これだけまとめて入手できる機会は稀だろうと云うので落札した「バクダン小僧」等戦前小型本型ノベルティの一口には、この他、印刷の4色分解を順序刷のようにして視覚化した左上の『シロキエホン 〔ノリモノ.コドモのオウチ〕のできるまで』や『幼年倶楽部附録 早ガハリエ本』なども
旧蔵者の選定眼が光るラインナップは明日より店頭でご覧いただけます。
『バクダン小僧』は一括での販売となります。どうか悪しからず。

今週の斜め読みから。
一週間前のあの地震で、10年前のニュース速報で何度も目にした町名が、今回もまた並んでいるのを見るにつけ、やるせない気持ちになりました。日本列島というのは思えばずいぶんと過酷な土地です。
https://www.facebook.com/masakatsu.yoshida.167/posts/1865450166953080

「復興」を謳って誘致したオリンピックはスタジアムからシンボルマーク、この度の舌禍等々、次々化けのが剥がされてきましたが、オリンピックのはらむ問題はそもそものところから根深いものがあるようです。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=3550716285152571&id=100006427023155

にしても、〇本会長に〇川担当相に女性4割ってそーゆーこと !?

 

 

 

21/02/13 ダンボールとエッフェル塔

■コロナこのかた、店でも自宅でも、ゴミ収集所に積みあがるダンボール箱の量を見るにつけ、梱包資材業界の活況を思うこの1年。だから、というわけではありませんが、『パッキングケース』なる冊子に目がとまりました。
表紙と本文ページ内のこの過剰なグラフィック表現!
映画『伯林大都会交響楽』のパンフレットに駆使されたフォト・モンタージュや雑誌『犯罪科学』誌上、板垣鷹穂・堀野正雄の名コンビが展開したグラフ・モンタージュにも通じるアヴァンギャルドな表現に驚きました。
また、枡形に近い判型は、1920~30年代に発行されたロシア絵本を思わせます。ロシア絵本のなかでも実験的な写真絵本を下敷きに、花王がつくったPR出版物『コレハ何デセウ』のことなども思い出したり。
これは"日本で初めて段ボール事業を創始"した「聯合紙器株式会社(現 レンゴー)」が発行した企業並びに製品案内の小冊子で、「工場所在地」に昭和10(1935)年開設の「京城」が記載されていることから、1930年代に発行されたものと見られます。ちなみに映画「伯林~」の公開が1927年、『犯罪科学』での板垣・堀野のグラフ・モンタージュは1931~32年にかけてのことでした。
さて、『パッキングケース』ですが、「産業躍進!輸出振興!は我国現下の重要問題」として、木箱より軽いので運賃を軽減、容積を減らして内容量を1割以上増量するとともに置場を節約、内容物の抜き取りを防止し破損も減少、定量販売に適して再包装の必要なし…等々、ダンボールを使った梱包・包装のもつ時代にマッチした利点をひとつひとつ挙げていきます。
縷々述べられる木箱と比べた時のメリットには、これまで気付かずにいた点も多く、いまや日常品となったダンボールがいかに便利で優秀なものだったか思わず見直すことになりました。
それはさておき。
なるほど、1930年代当時、大量消費社会の到来、輸出入をはじめとする物流の拡大を背景に、包装や梱包は先端技術産業のひとつとなっていたとしても不思議はなく、尖端産業には常に優れた表現=デザインがつきものだというのはご存じの通り。見れば日魯の冷凍鮭、紀州みかん、青森りんごから福助足袋、ニッケ、仁丹体温計、ビスコ、マツダランプ、果てはフランス向蟹缶詰ケース、米国向陶磁器用ケースまで、なんでも・どこまでも・安心して送れる技術と、いつ・どこに出しても恥ずかしくないデザインと堅牢さをもつダンボールは、時代の尖端へと踊り出ていたようです。 

聯合紙器は現在レンゴーとして着実に発展を遂げているのみならず、SDGsが最重要視される21世紀、再び時代の先端へと飛び出す用意はできている様子。1909年聯合紙器創業には、今年の大河ドラマの主人公・渋沢栄一が関わっていたとも。
『パッキングケース』というこの冊子、実は極めて2021年的なのかも知れません。

今週2点目は小店としては非常に珍しく現代ものからのご紹介。現代ものといってもエッフェル塔100年にあたる1989年のポスター6種10余点。図版はそのうちの1点で、建築写真家によるエッフェル塔のフォト・モンタージュで1点は写真家の署名入りです。
エッフェル塔の完成は1889年のこと。聯合紙器の創業はエッフェル塔完成から丁度20年後だったことになります。鉄と紙という対照的な素材ですが、フォト・モンタージュにしてみると実は構造的にとても似ていることが分かります。
左斜め上の画像も今回入荷したエッフェル塔のポスターであちらは少し小さいサイズ。

■2021年2月12日(金)、日本に初めてコロナウイルスのワクチンが到着しました。ファイザー社製、約40万回分だとの報道です。
少しずつ不穏な空気が色濃くなりはじめてはいたものの、去年の今頃はまだ、海外が数年単位で遠ざかることになるとは予想もしていなかったことを思い出します。
ゼロ年代、パリには毎年のように出かけながら、いまだエッフェル塔には登ったことがありません。塔上からパリを一望に見下ろすことができる日は、さて、いつのことになるのでしょう。
東京の感染者数の急激な減少にトリックは一切ないのか。指針となるものがどこにも見当たらない日本では、自衛しかないなと思います。みなさまどうかくれぐれもご用心を!
 

 

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