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16/03/19 大正・昭和の検閲台本ほか

 ■久しぶりの更新となりました。体調が悪い。とか、市場で全然落札できない。とか、取り立てて問題があるわけではなく、単なるサボタージュでありまして。がしかし、そうそうさぼっていられるような余裕のあるわけもなく、慌て気味での戦線復帰です。
こまごまとしてとりとめのない新着品が結構溜まってしまったため、何から行くか悩ましいところなのですが、とりあえずこれ。『検閲台本』。ケンエツ台本と云うのはものの存在は知っていたものの、現物を手にしたのは小店店主初めてです。
入荷した検閲台本は3冊。アメリカのユニヴァーサル社の実写映画『死の猛獣狩』の台本は、①巻末に上からバツ印を書き加えられた「愛媛県警察部 検閲官」の印ある1冊と、②表紙に「(認可台本)」と記された1冊の都合2冊。「認可台本」の検閲の日付から、大正11(1922)年12月の鹿児島での 検閲を振り出しに、大正13年に宮崎、愛媛、高知、徳島、香川と各地の検閲を通過した後、大正15年に再び愛媛県の検閲を経るなどしながら、それぞれの地 で上映に使われたものだと分かります。少々草臥れ気味のこの風情、数年にわたる西国巡礼の足跡と見てよろしいかと。
検閲と云うと「フィルムをずたずたに切られた」とか、「墨で塗りつぶされた」とか、いずれにしても短くされるものとばかり思っていたのは間違いで、①と② とを比べてみると、①が48Pなのに対して②は64P。同じ「全6巻」とあるのに、「完」までのシーンの数自体、②の方が大幅に増えています。昨今のニッ ポン国のマスメディアよろしく“忖度”して①がつくられた……かどうかは定かではありませんが、2冊を仔細に比較対照していけば、加筆修正の内容がたちま ち明らかになるという点で、この『死の猛獣狩』、面白いはずです。
話は前後しますが、ここで本邦活動写真検閲の歴史を確認しておくと、明治24年(1891)警察令による観物場取締規則、大正6年(1917)警視庁令に よる活動写真取締規則を経て、大正14年(1925)内務省令による全国統一検閲に至ると「次第に治安、公安警察的取締りが行われるようになり」「昭和6 年(1931)の満州事変以後、急速に国策としての国家統制への道を歩みはじめ」昭和8年(1933)には「映画国策樹立に関する建議案」が国会で採択さ れています。(「」は日本映画監督協会のHPに掲載されている資料より引用)
http://www.dgj.or.jp/freedom_expression_g/index_4.html 

 『死の猛獣狩』が大正末、取締り規制強化当時の検閲の実態を示すものであり、もう1冊、昭和13(1938)年に内務省の検閲を通ったパラマウント映画『絢爛たる殺人』の検閲台本は、映画が完全に権力の支配下に置かれた時代のそれはもう非常に具体的な証言だと云えます。
見開き左側に英文、右側に翻訳文を、それぞれ対照できる位置に置き、原文ページと合致する翻訳ページの全てに「内務省」の割り印を押すという念の入れよ う。しかしそれでも尚、墨塗りの箇所が発生し、かくして手を加えた部分にも内務省の印が押すという神経の配り方に、ほとんど狂気に近いものを感じます。
こちらは昭和13年3月の神田を皮切りに、8月の仙台まで、東京・神奈川・東北の10館を渡り歩いた記録があります。「もう草臥れきりました。」とでも云 いだしそうな風情は、転戦による負傷と云うよりは、よってたかって色々いじられた挙句に疲弊しちゃった姿ではないかと見ています。

検閲台本。まだまだ面白いところは拾えそうなのですが、これを書いてるワタシクが少々草臥れてまいりました。2点目はホントに一言で済ませます。およそ 10cmほどの小さなうさぎの置物。彫刻家・天野裕夫によるブロンズ像で、1999年の作品。専用の桐箱の表に「卯」の一文字、箱の蓋の裏に署名・落款 が、またうさぎの底のところに「AMANO 1999」の文字が刻まれています。かわいいけどちょっとヘン。この作家の作品としては至って地味な部類に属するようですが、作家性は健在。

■この他、戦前の婦人用小型名刺各種詰め合わせ2箱(100枚入り)、マッチラベル貼込帖7冊、堤石鹸のパッケージ用印刷物・未使用18点などが明日、店に入荷。また、1960年代の海外旅行関係の印刷物について、あと少しで整理を終えて店頭にお出しいたします。

サボっている間に5回目のあの日、3月11日が過ぎてしまいました。あの日の被災地で、あの日からのフクイチで、一体何が起こったのか。いま現在、一体 何がどのように進行しているのか。さまざまに伝えられながらも何かひとつ、被膜の向こう側に隠れていて肝心なことが見えてこない。検閲台本なんてものが用 いられるような時代は、少なくとも自分が生きている間はあり得ないとばかり思っていましたが、それも大間違いだったようです。いま現在、マスコミを覆って いる、権力者に対して“忖度”する = 結果として権力に阿る空気と検閲台本とは、ほとんど変わりありません。
今週のななめ読み。しかしそれもまた、国民が支持し、あまつさえ自らそのように仕向けているのだとすれば、この国の未来は冥い。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48194
こちらは対極。http://anond.hatelabo.jp/20160310225226

 

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