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16/04/02 織と染のコレクション、再びのその2 + 木版図案『陶漆』

 ■この春、私が社会人としてのスタートを切った会社の先輩で、お互いに会社を辞めてからも不思議とご縁が途絶えることなくこれまでお付き合い下さった方が、見事試験を突破して、手工芸を学ぶ学校に1年間通うため、京都へと旅立っていかれました。いい加減もう歳だからね、なんて自分に言い訳などしない清々しさ! 何歳からでも、何度だって、本気でやりたいことがあったならスタートラインに立ち、そこから一歩踏み出せばいいだけのこと。そのお手本を示された思いです。それにひきかえいつも同じところから踏み出そうともせず、ぼやいているばかりの自分のダメさ加減を痛感しつつ、それでもなお「いやはやそれにしたってちょっと早すぎゃしませんか早すぎますっていくら何でも」なんて例によってぼやきながら今年もはや4月を迎えました。どうもピリッとしたところなくこの数か月を行き過ごしてしまった私は、さて、一体いつになったらスタートを切る気になるんだろう?

布モノの出品も一段落したと見え、今週は久しぶりに「紙モノ」を交えての新着品のご紹介です。
木版刷の図案集『陶漆』は、タイトルの示す通り、陶磁器や漆器の意匠の手本を示そうと明治43(1910)年に木版刷の図案集の版元として屈指の京都・芸艸堂から発行されたもの。著者の中村秋甫については、その芸艸堂のサイトに“京都美術工芸学校図案科卒業。オーソドックスな図案製作の手法を学び、図案を残した。”との記述が見えるほかは、残念ながらよく分かりません。当書を見る限り、しかも、小店店主、つまりは素人の私見に過ぎませんが、西欧では日本の 美術・工芸意匠をどのようにして咀嚼してアール・ヌーヴォーに取り入れているのか、どの部分が海外にうけが良いのか、といったあたりをよく心得た優れたデザイナーだったはないかと思います、なんてことは何も私なんぞが云わなくとも、芸艸堂という版元が選んだというそれだけで折り紙つき、「うむむ。なかななか!」なのであります。

 木版装・上製の表紙はほぼB5サイズ。経本仕立ての本文は、見開き1面に1図或いは1組の図案を置く格好で全20面、商品意匠点数としては約30点。とくに漆器の黒をベースに考案された意匠には、一瞬息を飲むような見事なものが見られます。
この手の木版刷の図案集、再評価の機運が生まれたのも海外からなら、ただいま現在買い手のほとんどもこれまた海外。ものによっては無料ダウンロードさせてくれる実に気前良いサイトもほとんどが海外の公共機関です。ニッポンすごい!ニッポンすばらしい!ニッポン美しい!と云いたくて仕方のない あい✖✖✖✖のみなさまには、一向にご購入の気配がございませんがどうなさっているのでしょうか。ニッポンの文化的価値をアッピールするためにも、そろそろお宅に1冊常備してはいかがでしょうか? ちなみに当書、国立国会図書館のサイトに自宅のPCからでもアクセスしてデジタルデータの閲覧が全ページ可能で、見れば相当にがっかりすること必定。それだけに、だからこそ是非、多くの方にご覧いただきたい。アドレスは下記。このページにある「次」の部分をクリックするとページを繰って見ていくことができます。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/854525
それにしても、日本は、世界は、いつからこのようなデザインを見失ったしまったのか …… 自分の利益だけに拘泥してうだうだ云わず、東西相互に“良いとこ取り”が行われていた大らかな時代の豊かさを思う1冊です。

■と、ここから2点が先週の続き。お世辞にも達筆とは云い難く、かといって味のある字だとも云いにくい文字で『丹波もめん 民芸 型染柄見本』と書かれた手製本 - 文字はアレですが、綴じと紐のあたりはなかなかです - は、民芸と銘打っているだけあって、これまた日本人の暮らしの中にあった藍染の裂を蒐集したもの。接いだ部分や繕った跡、ほどいた痕や色あせた部分など、 さまざまな痕跡を宿した48点が収められています。裂のサイズがそれぞれ15~16cm×20~21cmほどとたっぷりとられていること、裏打などを含め、ほとんど何も手を加えられていないことが、この見本帳の手柄ではないかと思います。
6桁の通し番号の振られた紙が挟まれており、それなりの筋の旧蔵者のもとで、資料として作成・保存されていたものと見られます。

 本文は和紙が使われながら、持てばずっしりと感じられる重量は、庶民が日常に使用していた布がいかに丈夫につくられていたかの証でもありましょうか。また、言葉では一言、「藍」でくくってしまうこれらの染、青の多彩さと退色した際の表情の豊かさに改めて瞠目しました。常民の使っていた布の魅力を知るには、最も好適なコレクションです。

こちらは同じ染めでも多彩な色が用いられ、柄も自由闊達な更紗の裂の見本帖『古裂帖』です。布装上製、洋紙の厚紙を経本仕立てにし、両面を使用。 20×14cm・全42Pに82点の古裂=更紗が貼り込まれています。先週ご紹介した更紗手本が型紙を象りした図案の記録だったのに対し、こちらは布現物を集めている点が最大の違いとなります。また、『古裂帖』については、少なくとも19世紀中葉頃まで遡ることのできそうな時代がかった裂も収められており、なかにはヨーロッパ更紗と思われるものも。細かな幾何学模様から大胆な植物図案まで、また、糸の細いしなやかな生地から、タテヨコの糸目が肉眼でも見える粗野な生地まで多彩。古裂はいずれもとても状態よく、また大変に清潔なたたずまいであることから、見て触れて気持ちよいコレクションとなっています。
出元はひとつ前の『丹波もめん 民芸 型染柄見本』と同じところと見られることから、こちらも資料として保存されていたものと見られます。貴重、かつ希少。

■今週はこの他、洋裁関係のテキスト数種とランバンのコレクションのプログラム、戦前のライカのカタログ類などが店に入ります。
雨の後の桜の満開の下、春の到来を満喫できますように!

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