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16/10/29 アメリカとドイツから 1920年代の前衛芸術誌 『THE LITTLE REVIEW』とご存知『DER STURM』

 
■ここ一週間で、その日のうちに帰宅できたのはわずかに2日。残り5日の内、4日は深夜2時過ぎ・3時過ぎてやっと夕食にありつくという滅茶苦茶が続いております。ひとりブラック企業の面目活如と云うべきこの状況、早くも来年1月の「銀座 古書の市」の目録作成作業に入ったのに加え、ありがちなこととはいえ、こういう時に限って案件が三つ四つ……と重なりまして、要は小店店主の事務処理 能力の不足によるもの。自業自得とはいえ、目録締め切り間に合うのだろうか…。
がしかし、それでも休んでいるわけにいかないのが市場であり、開けてるだけじゃあ意味のないのが店と云うもの。今週も商品新顔をご用意してご来店をお待ち申し上げるべく、正真正銘駆け足での新着品の紹介とさせていただきます。2点とも久しぶりに “格好良い系”です。

ふいに出くわすものに教えられる。未だ知らないものと隣り合わせで日常を送る。古本屋と云うのは、思えばとても恵まれた仕事だと思います。市場で初めて見 た『THE LITTLE REVIEW』も、この1冊を通して初めてその存在を知り、落札した後には、これまで知らないでいた同誌の果たした大きな役割を教えられることになりまし た。
1914年、まだ20代だったマーガレット・アンダーソンと云う女性が立ち上げたアメリカの雑誌『リトル・レビュー』は、ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」を連載したことで知られるそうで、そうなると知らなかったのが恥ずかしいレベルの有名雑誌なのでした。
市場では、とりあえず、1910~60年代頃までに発行された洋モノで、初見のものにはできるだけ目を通すようにしているので、これもまた最初は何気なく手をとったのものだったのですが、先ず表紙をめくって出てくる見開きの版組を一目見て吃驚。縦横にスペースを仕切る太い罫線と大小活字を組み合わせた面構えは、アヴァンギャルドの気合十分ではないかと。 慌てて中を見ていくと、別丁図版にザッキンだとかマン・レイだとかの作品があるかと思うと機械美を伝える写真があり、テキストにテオ・ファン・ドースブルフの名前が出てくるかと思えば、ドースブルフの筆名だと落札後に知ることになった「I.K.ボンセット」による一連の視覚詩作品まで掲載されていて…といった調子で只者でないことは明らか。ロシア現代美術の広告が配された裏表紙がとどめを刺す格好です。

英語版のウィキから当誌の果たした役割を簡単にまとめると、ジャン・アルプとエズラ・パウンドの協力により欧米のモダニストたちの活動と文学・美術作品を幅広く取り上げ、シュルレアリスムとダダイズムのごく初期における紹介誌となった――といったところでしょうか。
こんな雑誌を可能にしたマーガレット・アンダーソンについては、「YOMIURI ONLINE」のページで簡単に紹介している文章がありますので、ご興味をお持ちの方は下記のアドレスから是非。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/research/kyoso_081111.html
最低でも1度は毎週市場に行く。こういうものとの出会いがある限り、こればかりはやめるわけにはいかない所以です。

■『THE LITTLE REVIEW』と同時代のドイツから、こちらは日本でも、とくに大正期前衛芸術運動に関心をお持ちの方にはよく知られた雑誌『DER STURM (デア・シュトゥルム) 』。小店店主なんぞの説明もどきをお読みいただくより、余程しっかりしたところでご確認いただいくに如くはなく、例えば下記のサイトなどをお訪ね下さい。
artscape
徳島県立美術館 美術用語詳細情報
尚、今回、小店に入荷したのは1922年4月、5月、6月発行の3冊。3冊ともカラープレートはラリオノフの舞台美術・衣裳をとりあげたもの。イヴァン・ ゴル、クルト・シュビッタース、ルイ・アラゴン、ゴンチャロワなどの名前の並ぶ目次には、そろそろこのあたりはスルーしてもいいかなんて思ったのも一瞬、 いまだに眩惑を覚えて、ついつい手を出してしまった次第です。

今週はこの他、パリ・ベルリン他戦前欧州都市観光写真帖、1950年代前後外国地図、戦前旦那衆のおあそびの痕跡と思われる「来訪帖」等4冊などが明日、店に到着の予定です。
さて。今晩もこれから少なくともひとつは案件を片付けないとまずいのでありまして、ああ、夜が、よ、よるが長すぎる…。

 

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