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18/02/03 木版上のモード … 神坂雪佳『海路』明治期初版と昭和初期・帝国劇場のプログラム

■今週は最初にお知らせをひとつ。
本日2月3日(土)は所用のため、店の開店時間を17時半前後とさせていただきます。どうかご注意下さい。
来週はいつも通りの営業となります。ご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

各種工芸分野に応用可能で、海外輸出にも適した優れたデザインを提供すべく、明治期に盛んにつくられた木版刷の図案集の価格高騰が、とどまるところを知りません。この相場急騰は大方、と云うより間違いなく、海外の需要に支えられており、海外でも名の知られた作家や版元のものとなると、「浮世絵か?」と思うような価格になるケースも頻出しています。
その代表的な意匠家=明治時代のグラフィック・デザイナーが神坂雪佳であり、代表的な版元が京都の芸艸堂です。
2001年、フランスのハイブランド、エルメスが同社発行のPR誌『LE MONDE D`HERMES ( ル・モンド・エルメス )』の表紙と巻頭記事に神坂雪佳の作品を採用したことが大きなきっかけとなったものと思われますが、以来、ゆるやかに上昇してきた価格がここにきて急騰した背景には、日本の木版刷図案を積極的にデータ化し無料で公開する動きが海外の博物館・美術館にさかんに見られることや、国や言語を超え、趣味嗜好や必要に応じて、視覚的情報を摂取・収集できるinstagamなどの影響があるのではないかと思います。
今週ようやくご紹介にこぎつけた神坂雪佳の『海路』は明治35(1902)年、芸艸堂から発行された初版。作家・版元・刷りの三拍子揃った良品ですが、非常に残念なことに表紙・裏表紙がありません。序文・奥付は残っているというのになぜ表紙まわりだけ失われることになってしまったのか? 本文木版図案部分はシミもシワもなく状態良好なだけに、この謎はとけそうにありません。
『海路』は前年の1901年、“グラスゴー国際博覧会 (Glasgow International Exhibition) の視察を目的とし、世界各地の図案の調査を兼ねて渡欧(wikiより)”する雪佳が、往還の船上、無聊を慰めるべく飽かず眺めた波が変幻自在に見せる形象を図案化したものだとか。
いまから100年以上前の図案の中には、日本の古典的な文様に洗練を加えたようなものから、当時欧州で大流行していたアール・ヌーヴォー調があり、はたまた まるでCG処理したかのような現代的なものまでと、その手腕には目を見張るばかり。雪佳は日本的なデザインの魅力を、日本人でありながら外国人の目で見ることができた人と云えるかも知れません。

表紙がないからといって格安かといえばさにあらず。いやはや随分以前に一度落札した傷み本と比べても優に3倍。自分で入札しておいて何ですが、どうなってるんだという価格でした。
今日までご紹介が遅れた背景には、落札価格から考えて、思い切って綴糸を切って木版1枚ものとして販売するか、表紙以外の揃いで販売するか判断しかねていたという事情がありました。
改めて冷静に眺めた結果、当面バラすことなく現状のままでいくことにいたしました。何しろ雪佳の転機ともなった渡航体験を色濃く映した『海路』です。全点揃っていることに意味はあるはずです。是非、画像検索してみて下さい。元版はそうそう出てくるものではないようですよ。

■『海路』から時を経ることおよそ30年。昭和初期ともなると木版という日本の伝統的手法を使いながら、まるでフランスの高級婦人誌のようなデザインの広告なども登場するようになります。例えば帝劇の海外歌劇団・演奏家の来日公演のプログラムに出稿した御木本の広告にはちょっと驚きました。
大正末~昭和初期の丸の内・帝国劇場の海外公演プログラム13点が入荷しました。御木本の広告はこのうち昭和5(1930)年の2点に掲載されています。画像真ん中のオレンジ色とブルーで描かれた軽快な曲線で構成されたデザインもなかなかモダンです。伴野商店のパテベビーの広告がまた高級婦人誌のタッチで揃ってモダン。
しかし、この場合、肝心なのは公演内容でありまして、主だったものを挙げますとフリッツ・クライスラー(大正12=1923年)、エフレム・ジンバリスト(昭和2=1927年)、ジャック・ディボウ、セシリア・ハンセン(昭和3=1928年)、舞踊のアルヘンティーナ(昭和4=1929年)、カーピ伊太利大歌劇団(昭和5=1930年)など。さらに。昭和6(1931)年にはサカロフ夫妻が来日、第一部・第二部併せて17の演目がクレジットされています
いずれも写真など画像はひとつもありませんが、手間暇かけた木版刷や欧文組版、広告に至るまで、いまは名前も分からない当時の人たちによる、精いっぱい背伸びしての仕事であったのだろうと思います。
こちらは1点ごとにバラ売りいたします。

この他、『考現学』『考現学採集』、明治初期の建築・建築装飾関係の和本、1930年代フランスのファッション雑誌と戦後1950~1960年代の海外ファッション雑誌4本分(およそ70~80冊)などが来週木曜日には店に入ります。



 

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