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18/03/31 丸亀R不動産!? と 久々の満洲関係と。

■来週からは2018年度。2017年度もお陰様で小店会計的には黒字となりました。が、元々高かった原価率の急騰にのけぞりました。一般的な本はやらないと決めてから覚悟していたことではありますが、しかしまさかここまで嵩んでくるとは……。 2017年度の数字を見、少しどうにかしないとまずい。このまま行ってはあぶな過ぎる。なんて思っていたというのに。いつまで経っても学習能力が限りなく「ぜろ」に等しい小店店主、そんな矢先に大量の落札。しかも何故にこんな値段 !? というのがちらほら。
桜の花びらの散る風情なら ちらほらも絵になるのですが、小店の方のちらほらはさっぱり絵にならず、同じなのは「あとは ぱあっと散るだけ。」というただ一点のみ。東京の桜は昨晩からさかんに花びらを散らしておりますが、こちらはせめてもう少し枝にしがみついているべく、今週の更新は「ちらほら」から選びました。動機不純な選択であります。

中国の方たちの購買力はまだまだ健在だということなのか、古書の市場では中国関係、とくに植民地時代関係の商材の落札価格は依然として高止まり。とくに地図や薄い冊子など紙モノに近い商材については市場での競争も苛烈。そうしたこともあって満洲関係は暫くご無沙汰していましたが、今週は久々の入荷です。
『流線形 特急あじあ』は1937(昭和12)年、南満州鉄道(株)が発行したパンフレット。B6サイズ20Pの小さなパンフレットですが、落札価格は立派な写真集なみでした。
肝心の内容ですが、これが徹底的に「あじあ号」の優秀性を説明したもので、これまでの鉄道では実現できなかったスピードとそれを可能にした技術、さらに、これまでにない快適性を実現した車内環境とそれを維持するための仕組みや機能等の解説に徹底的に特化しているのが、他の「あじあ号」関係の印刷物とは異なる面白いところではないかと思います。写真も掲載されていて停車しているあじあ号の停車中の外観を含む14点を数えます。

■グレーの表紙にあるこげ茶色のタイトルが見辛いかと思いますが、横に長いもうひとつの方は題して『観光都市 安東とその近郊』。康徳9年=1942年=昭和17年、満洲の安東市に置かれていた「安東商工公会」から発行されたものです。A5変形(横が長い)・46P。
上の『あじあ号』とは対照的に、こちらは情感豊かに安東の発展と魅力とを表現しようという意図がうかがえます。競馬や競犬(?)なんて章も。
なかでも力がこもっているのが工費数億円を投じたとされる「大東港建設譜」の章で、満洲にとって非常に重要な不凍港の完成に対する期待のほどがうかがえます。
この2冊は分売で、本日より店頭へ出す予定です。


■さて、こちらはとても面白い。面白いけれど一体どういった方が何のために買うのかさっぱり頭に浮かんでこない、大正から昭和初期にかけて丸亀およびその周辺のどなたかが所有或いは管理していた丸亀市中13の町の土地と家屋に関する緻密かつ詳細な台帳です。
丸亀が町から市へとなったのは明治32年=1899年。当台帳も明治末~大正初期につくられたものと見られます。2冊とも全て筆書き、彩色も手仕事で、間取り図の細かな書き入れには驚嘆しました。
『貸家土地台帳』は地所の住所、正確に計算された面積、家賃と税額などを、地型図面とともにまとめたもので、各町別の扉には、当該地所を地図上に落とし込んだ彩色図も添えられています。
『貸家台帳』はタイトル通りいわゆる上物に関する情報をまとめたもので、1軒毎に1頁を割き、
設えや付帯設備まで非常に細かく書き入れた間取り図と、土地面積、建坪、付帯施設名とその面積などデータとで構成されています。
厚さにして約2cm分の間取り図には、倉庫を擁し多くの部屋を備えた商家向けの物件や富裕層向けと思われる豪邸から、京都の町屋にも似て間口は狭く細長い上流~中流向けの家屋、3畳から6畳の一間、板座と板戸がついてるだけで風呂なし、厠なし、がしかし2階がある例も見られる狭小家屋(いまならワンルームマンション?)、さらに窓もなければ床板もない、云ってしまえばただの小屋といった体の物件まで、ヴァリエーション豊富。一部屋ながら床竹敷きの部屋があったり、2階はあってもそこに床がないなど、突っ込みどころもいっぱい。いまならさしずめ東京R不動産のサイトといった感じでしょうか。
全体を眺めていると、町によって家屋の標準的な面積が異なっていたり、厠というのは1軒毎に備えるのではなく、いわゆる共用部分をつくってそこにまとめて設置する例が多かったり、いまで云う家屋の原状には戸板や欄間などが含まれる一方、竈や台所、風呂などは原状に含まれていないなど、意外な発見もたくさんあります。壁と屋根に板戸1枚の掘っ立て小屋の借主に女性の名前があるのを見るれば何だか胸も詰まります。
およそ100年前の間取り図は(ごく一部の富裕層を別にして)、おそらくはあの敗戦の後の民主化によって、人々の生活が少なくともより良く豊かになったこと教えてくれているようにも思えてくるのでした。

本日より再び市場への出品作業のため、店内暫く取り散らかる格好となりますが、ご来店の際にはお探しのものなどお声をおかけいただければ幸いです。

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