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18/04/28 津田青楓パリ留学前のアール・ヌーヴォー『ナツ艸』/ 世界の河原温への第一歩『課題をもつた美術展“ニッポン”』目録

■電車の車内には今週水曜日頃からもう、心なしかゴールデンウィークを思わせるゆるめの空気が漂っていましたが、本日より大手を振っての本番であります。
本日4月28日(土)12時より20時まで通常営業して後、4月29日(日)より5月7日(月)まで、お休みをいただきます。営業再開は5月8日(火)となります。
また、4月28日(土)には目黒のアンティークショップ、ジェオグラフィカさんで「アンティーク・マーケット」がスタートします。5月6日(日)まで。会期中の4月30日(月)の午後は、日月堂も目黒で店番を務める心づもり。詳細については下記のアドレスでご確認の上、GWは目黒通り散策に是非お出かけ下さい !
ジェオグラフィカへのアクセスはこちら。
http://geographica.jp/access/
アンティーク・マーケットについてはこちら。
https://ec.geographica.jp/news/IF000184
尚、心置きなくGWを過ごすために何とか仕事に区切りがつけられないかと一昨日の閉店直後より2件分の商品仕分けに着手 …… してしまった結果、「店」とは名ばかり、店内くまなく作業場と化した惨状を呈しております。ただいま現在に至るも収拾の目途たたず(-_-;)
今日は日月堂でも覗いてみようかなんて考えて下さる有難いお客様には、予めお含みおき下さいますようよろしくお願い申し上げます。
ま、そもそも小店など脇に置いて。とにもかくにも
みなさまどうか佳き休日をお過ごし下さい ! 

明治期に盛んに出版された木版刷の図案集を、扱い商品の柱のひとつとするようになってから かれこれ十数年は経とうかと思いますが、この数年で市場での落札価格が漸次上昇、さらにこの1年の間に「急騰」と云うべき状況が生じており、特に神坂雪佳、古谷紅麟などの仕事も多く、海外にこちらの版元が出したものの蒐集家が多数存在するらしい「芸艸堂」の図案集は、もう小店には手が届かないものになってしまったなあと、半ば落札はあきらめるに至っていました。がしかし。負けてもいいから挫けず入札し続けていると、たっまぁ~~にこういうことが起こるので市場通いを続けることになるわけで。
『ナツ艸』の文字が図案と一体化したこの表紙、図案集としては珍しい正方形の判型のお陰もあってか、図案集における強者お二人が揃って見逃した結果、小店に転がり込んだということだったらしく、このあたりもまた市場の妙とでも云いましょうか。すみません。くだらぬ前置きが長くなりました。
山田芸艸堂より明治37(1904)年に発行された木版多色刷の図案集が入荷いたしました。『ナツ艸』著者は津田青楓全30図を所収。26cm弱と比較的大きな枡形の判型は、図案が団扇のためのものであることに起因しています。 

団扇のデザインに限定されていてあまり受けなかったのか、特殊な判型のため残りにくかったのか、『ナツ艸』は小店店主初見でした。珍しい。はずである。がしかし。落札できた途端に俄かに不安に襲われるのも市場で古本屋が味わう不思議な心理でありまして、偶か近くにいたこの手のものに強いご同業何人かに確認してみたところ彼らも揃って初見とのお話し。芸艸堂には青楓の木版刷図案集が複数あり、最近にはそれらの図案をまとめ直した『津田青楓の図案』という本も発行されているのだけれど、その目次にも『ナツ艸』の記載なし。やはり非常に珍しい本であろうと思います。
ご存知の通り、後に漱石の本の装丁なども手掛ける津田青楓は、1907年から1909年までパリに留学。彼の地でアール・ヌーヴォーの影響を受けたのは当然として、留学以前の仕事で、しかも20代半ばにしてこの完成度かと思うと - 表紙からして驚嘆の出来、師匠である浅井忠の薫陶も大きかったとは思いますが - 名を残す人の才能とはかくなるものかと唸ること請けあいです。

■こちらは一転して実に質素な印刷物です。わら半紙に孔版刷、美術展に関する記録ですが図版の1点もない16P。昭和28(1953)年6月に開催された、“ニッポン”展委員会・前衛美術会主催による『課題をもつた美術展 “ニッポン”-美術家のみた日本のすがた-』の出品目録
巻頭の宣言文(末尾に勅使河原宏と名前と事務局の記載あり)、前衛美術会の「今後のあり方について」と「会期中の催し」に続き、「陳列目録」5P(167点 作品名と作家名)、「出品者のこえ」4Pと云う構成。
「陳列目録」に細かい文字で作品のモチーフ、表現されている光景などがメモされているお陰で、タイトルと併せて見ると、全体に労働者や子供、虐げられている人、貧しさ、過酷な現実、基地の問題など、プロレタリア・アートに連なる作品が多数を占めていた様子がうかがえます。
市場でパンフレット類の一括の中からひっぱり出しパラパラ捲っていると目録に「浴室(連作16点) カワラ・オン」とあるのに気付いて俄然買う気になったのですが、河原温がこの時に「浴室」を初めて発表、注目を集めた、というのを知ったのは落札して後のこととなりました。落札できて本当によかった。
出品者は他に、山下菊二(「菊三」と誤記)、丸木位里、小山田二郎、池田龍雄、安部真知、桂川寛など。意外なことに、河野鷹思、高橋錦吉の名前も。
これまでのところ、当冊子の閲覧先や当冊子に基づく研究・記述等がほとんど見当たらず、体裁が体裁なだけに、残されているものは少ないのではないかと思います。

■『課題をもつた美術展 “ニッポン”』の巻頭文中に、さまざまに並べられた課題の一つとして、自由であるべき日本が“古い日本にすりかえられていること”という くだりがあります。敗戦から僅かに8年。自由の有難さ、古い日本が抱えていた問題など、まだまだ骨身に沁みて分かっていただろうと思えばさにあらず。忖度改竄隠蔽廃棄に各種ハラスメントまで時代劇のお代官様を思わせる傍若無人によって日々刻々古い日本に巻き戻されていくかのようないまの状況は、その状況を赦しているのは、何もいまに始まったことではなく、なるほど日本国とか日本人とか云うものもつの特性なのかも知れません。
せめて休日は晴天に恵まれたい。望みとか希望とかががだんだん小さくなっていく2018年のGWです。
くどくて申し訳ありません。もう一度。「みなさまどうか佳き休日を !」  

 

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