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18/12/01 瀧口修造によるマルセル・デュシャン追悼10部手製本! と手製本感満点の若林奮『緑の森一角獣座』他 日本のテートから

■年内残すところあとひと月となりました。この1年、ますます信じがたいスピードで過ぎゆきつつあります。1月16日にスタートする「銀座 古書の市」の目録は昨日校了、目録発送名簿も提出し、仕事はすでにほぼ来月=来年! の準備に入っています。
目録と云うのがクセもので、前回1度パスしたこともあり、今回はとくに脳みそまで汗かきながら必死で並べたつもりの商品ラインナップも、校正の段階に入って目にするとさっぱり売れる気がせず、年末のこの金詰まりの時に限って、加えて目録修正のきかない段階に入って、こっちの方が余程売れそうな気がするものが入荷するのは一体何故なんだか。
もっとも、「気がする」のと現実との間には常に乖離があるもので、厳然たる事実と云えば「出費ばかりがかさんでいる。」ということ、それだけ。やれやれ。
今週の新着品は、できれば目録の戦後美術関係のページに是非載せたかったものばかりです。
 
20世紀美術の巨星のひとり マルセル・デュシャン。今週の1点目は、東京国立博物館で開催されている展覧会でも話題のデュシャンに関係するものです。
マルセル・デュシャンの死をうけて、親交の深かった瀧口修造が手ずから作成した限定10部の手製冊子『A Swift Requiem : Marcel Duchamp 1887-1968』がそれ。 

デュシャン死去直後の『美術手帖』1968年12月号に瀧口が寄稿した追悼「急速な鎮魂曲 マルセル・デュシャンの死」を抜き出して(抜き刷りか?)、二つ折りの和紙に綴じ込み、デスノスの詩の引用、コロフォンその他をタイプ打ちしてあります。限定版の記番は「2/10」。「/10」の部分はタイプ打ち、「2」はグリーンのペンで書き込まれています。
お分かりの通り、この手製本、いまからちょうど半世紀前に、たった10冊だけつくられたもの。瀧口からマン・レイやジャスパー・ジョーンズ等、デュシャンと瀧口両者にゆかりの著名人にだけ、そっと贈られたものらしい。それが何故、1冊ポツリと市場に出てきたのか、旧蔵者は誰なのか、何も分からないまま、と云うかそもそも初見ですから「こんなものがあったのか!」と驚き、さらに薄いし、表紙はゼロックスを貼っただけだし、これほど小店店主の最も好むところのものはなく、その勢いで落札しちゃったようなものです。すみません。
わずか14Pの冊子ですが、瀧口は美術手帖への寄稿とこの手製本とにいくつもの構成要素を盛り込んでおり、そのあたりのことについては、市井にあって瀧口研究でその名を知られる土淵信彦氏が詳細に分析した記録がありますので、是非とも下記のサイトでご覧下さい。
http://blog.livedoor.jp/tokinowasuremono/archives/53186660.html
また瀧口の『美術手帖』寄稿に関する詳細な検討も、このひとつ前の投稿に書かれておられますので併せて是非に。
http://blog.livedoor.jp/tokinowasuremono/archives/2015-10-13.html
これさえお読みいただければ、小店から付言できるようなことはひとつもありません。もし云えることがあるとするならば、デュシャンの死にあたり、その悲しみを伝えたい人に向けて、僅かに10冊の冊子を作った、その行為に打たれます。質素で洗練されたこの冊子のもつ静けさの底には、怜悧な悲しみとでも云うようなものが沈められているように思えてなりません。美しい本です。
 

■こちらもまた「薄い」、そして表紙ばかりか本文も「ゼロックス」と云う小店店主のツボを突いた冊子。何よりかねてより耳にしてはいたものの、そのイメージがいまひとつ像を結んでいなかった若林奮の『緑の森の一角獣座 1996』です。表紙は色紙で題箋を貼込み、本文は上質紙にコピーまたは軽印刷したもので、二つ折りにして綴じただけの手製感満点の冊子。 
「緑の森の一角獣座」と云うのは、東京・日の出町のゴミ処分場建築に反対するトラスト運動に参加した若林が、「トラスト運動の土地を作品として制作」することで処分場建設を阻止しようとしたもので、“「芸術の著作権」を盾に戦った日本では珍しい例”(参照: http://artscape.jp/report/review/10114906_1735.html)
当冊子では、進行中の第一期だけでなく、「周囲の破壊が進んだ場合に、この土地を木々の描かれた36枚の銅板で囲む」第二期のプランが、若林のドローイングによって示されています。
この活動については記録集なども刊行されていますが、当冊子についてはあまり知られていないようで、冊子のつくりから見ても、そうたくさんはつくられなかったのではないかと思います。
 
もう1点。群馬県渋川市の主催で開催されていた「渋川現代彫刻トリエンナーレ '87」の作品図録。鉄板に穴をあけ、図録にあたる未綴じの印刷物をサンドイッチしてビスでとめた、オブジェのような本。先の2点とは対照的ですが、このオブジェ感にひかれての落札でした。
87年の展覧会には、高山登、戸谷成雄、遠藤利克、高木修、西雅秋などが参加。
図録のこの物質感は展覧会に合わせてのものだと思いますが、いま見ると実に1980年代的な1冊? です。
同じく鉄板で挟んだ 90年の図録との2冊の入荷です。
 
■今週はこの他、杉浦非水デザインの戦前のタバコポスター4点月刊ライカ15冊などが1日中に店に入ります。
 
 

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