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19/08/10 夏休みのお知らせと戦争の表現・戦間期の混迷にまつわるものたち


暑中お見舞い申し上げます
 
命の危険を感じるのは台風や豪雨だけじゃあないというのを実感する暑さが続いております。
そもそも普段より気力充実とは縁遠い小店店主、この暑さでできることなら仕事を放棄したいと申すものですから、8月11日(日)より19日(月)まで夏季休業いたします。
遠出の予定があるでもなく、できることなら数日は店のバックヤードの整理に手を付けたい等々、その日の気分で動くことになりそうです。
ご用の方はFacebookの「古書 日月堂」からメッセージをいただければご返信できるかとは存じますが、先ずはみなさまお元気で佳き夏季休暇をお過ごし下さいますように!
 
画像1点目と2点目は、1冊のスクラップ帖から、カテゴリーに分けて画像処理してみたものです。いずれも1938年頃から1940年前後に制作されたもので、戦前の丸善のウィンドーディスプレイや装丁のデザインに関わった人が自身でつくったデザイン原画と、自分の作品を記録した写真と見られます。
中に1篇残されていた自筆原稿『日展所感』の署名から、多摩帝国美術大学に在籍していたことのある武田弘と云う人の旧蔵品だった可能性があります。
画像1点目の丸善に関係したデザイン原画は水彩で11点。 

画像2点目のウィンドーディスプレイにそのまま使われているものが数点あることから、ディスプレイ・デザインの原案が多いのではないかと思います。
デザインはモダン。特徴は戦時色という時代性。これが一貫したデザインの基調となっています。
アテナインキの場合は、「出せ慰問文」「書け!慰問文」「文字の慰問袋を」「前線へ慰問文を送れ!」「兵隊さんへお手紙を出そう」「無敵鮮色!アテナインキ」など、戦地への慰問袋を一大商機(唯一の商機?)と見ての力の入れようです。
同じ手によって丸善出版物のためにつくられたと見られる装丁原画16点が残されています。
 
■画像2点目は丸善のウィンドー・ディスプレイを撮影した写真37点。全点真正面から紙焼きのサイズピッタリに撮影された記録用の写真です。
デザイン原画と比べて一層洗練された仕上がりとなっていますが、「国産愛用」「足に新制」(意味不明)から「進め増産」「防空即生活」「護れ国土」「万歳 シンガポール陥落」まで、戦時体制色一色といった感あり、下から押し上げるような国民の側からの圧力が、戦時体制や挙国一致を支えていたことが伺えます。
 
専用ファイルと添付の冊子の表紙に『NOTGELD(ノートゲルト) 1914-1924』とタイトルが印刷されているのは、ドイツやオーストリアで発行された補完通貨のコレクションです。
ドイツやオーストリアでは20世紀初頭から紙幣、コインとも、補完通貨が発行されていましたが、このコレクションは、第一次世界大戦時の戦費負担によって起きたインフレを改善するために発行された補完紙幣(1914年)から、戦間期にも進行したインフレに対抗して自治体や商店から出され、やがてコレクターズ・アイテムや投機目的となった紙幣までを集めたもの。1924年という区切りは、ワイマール共和国で起こったハイパーインフレによって、あれよあれよという間に価値を失っていくノートゲートを回収、新たに発行したレンテンマルクへの交換が終わった年=ルートゲルトが終焉を迎えた1924年までを意味しているようです。 
第一次世界大戦後のドイツの経済的な疲弊がヒトラーとその独裁政権を呼んだというのは周知の通り。第一次大戦を第二次世界大戦へとつなげてしまった紙モノたちだと云えるのかも知れません。

夥しい種類・量のノートゲルトは、レンテンマルクへの切り替えによって古紙回収業者によって引き取られるという運命をたどったと云われますが、一方で、どうやらそのなかでも何かしら目をひくものを集めて販売しようと考えた御仁が居たらしく、このファイルはこうした目ざとい商人が商材として整え、販売したものと見られます。
点数は639点。いずれも両面印刷で多くは両面ともカラー刷の美麗なもの多数。発行当時からコレクターズ・アイテムとなっていたというのもむべなるかな。紙モノ好きの方にとっては一見の価値あり。です。

「表現の不自由展」聞いて、小店店主が先ず頭に思い浮かべたのは、赤瀬川原平が千円札裁判に際して仲間の芸術家や支援者とともに開催した展覧会のことでした。
あの時と決定的に異なるのは、例えば週刊文春のアンケートで、「平和の少女像の展示に反対」する人が74%にのぼるなど、国民の側が自ら進んで、芸術への権力の介入、つまりは検閲を容認するかのような空気がいまは確かにある、ということではないかと思います。
国民が自ら進んで検閲を支持・後押しするような国というのを(少なくとも民主主義国家において)私は他に知りません。
今週は色々読みましたが、これはと思ったものをメモしておきます。

「表現の不自由展」について最も読んでおく意味があると思ったのが。展示中止前に見てきた方のこのコラム。
https://note.mu/segawashin/n/nd000935e7c61?fbclid=IwAR0RXoeEp71pmU8tnOlVZ60ehEC80M-t1hBqdm2L6tq2OLfrDMRKsfozQoE
3.11後、作家として表現を通して異議申し立てをするということの覚悟。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=2326022497518241&set=a.1813834892070340&type=3&theater
ドイツの若者は映画「主戦場」をどう観たか。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190808-00000002-yonnana-soci&p=5&fbclid=IwAR2pBXD5d30SbCk-ono0G249n85nG4ydeQbZwrFoEqgOtnhVO6SUy_1WEMw
日韓相互理解のための補助線とそのありか。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66356?page=2&fbclid=IwAR07hQa7AYgFb_Gs9ozUUairPLoqbIHPl1F6zARuonTABzCuO5UQmfoPuL
少し古いコラムですが、世界から見た従軍慰安婦問題と国際社会における日本への視線。
https://note.mu/hiroshiono/n/n4a5033c08337?fbclid=IwAR05h9uvzSA66G_ErdEh4euqmuy0rILEJ6jZqPy20CihZOGhKQ1i_Wa2DOA

以上、どれも非常に冷静です。あと、既述した週刊文春のアンケートについては念のためはこちらへ。
https://bunshun.jp/articles/-/13292

戦後、国際展としてカッセルでスタートしたドクメンタは、ナチスによる「退廃美術展」に対抗して開始されたのだと聞きました。とすれば、官憲の介入を断固拒否してこそ国際展の正嫡だと云えるでしょう。
さて、愛知トリエンナーレは ?
 

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