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19/09/07 戦後日本美術のアヴァンギャルド …『ART21』と『アンデパンダン展の解説』

■先週はFacebookではお知らせしたものの、当ページの更新を何の断りもなく休んでしまい失礼いたしました。量に圧倒されるご蔵書の整理、その第一回目の市会出品を恙なく終えたところで腑抜け状態に陥ったような次第です。
バックヤードの整理に多少は汗をかきました、という程度の今週は、真面目にやらないとね。というわけで、今週は真面目にやります。気が付けば9月。何しろ年内更新も残るは十数回となってきました。1年の何と早いことよ!
 
美術関係の資料に焦点をあてて市場を見ていると、戦前のものより敗戦直後から1950年代・1960年代のものの方が残っていないのではないかと思うことが度々あります。とくに紙のペラものや機関紙誌・同人誌などは、さて、これから出てくるものなのか、それとも高度成長期に一拍遅れた時点できれいさっぱり捨てられてしまったものか、そのあたりのことが判明するにはまだ少し時間が必要なようではありますが。今週は、この辺りからピックアップして新着品の更新へとまいります。
さて。というか、そもそも。古本屋の「気づき」などというもの、多くの場合は何かしら実体あるモノと突然出くわすか、まるで針のひと突きのような点を突破口に、古本屋よりずっと深く掘り進めているお客様からもたらされるもの、というのが相場です。
「全日本現代芸術家協議会」という団体の機関誌『ART21』は、当品と市場で出くわす数日前に偶然、お客様から教えられたいくつかのキーワードが頭にあったことで入札する気になり、かつまた落札できたものだと云えます。
入荷した『ART21』は1966年~1967年に発行された第1号から第3号までの3冊
創刊号は協議会と協議会が発行する機関誌の指針、運営、骨子、概要などについてひたすら明文化することに徹した地味な内容ですが、会員名簿に秋山祐徳太子や、近年、反芸術パフォーマンスの流れに位置付けられた小山哲男といった名前があるあたりに、不穏な気配も。
その空気は第2号で早くも細部にまで充満、第2号・3号の記事タイトルの抜き書きだけでも十分に伝わるかと思います。以下、その抜き書きをあげておきます。
第2号 →  ガガ現代美術会「グループ芸術論」、小川哲男ビタミンセンター「ビタミン・アート」、松本百司「通俗物の時代 <カンバン絵画の可能性>」、ゼロ次元 為夫・ド・コバンスキ「中間分子を追放せよ!」、美術集団「残党会議」事務局(秋山祐徳太子他)「風に向かって臨むゲリラ芸術集団」、「あるグループの記録 ROZO群」、「存在解説家 佐々木耕成のPERFECT思想解説」、「ジャック美術館シリーズ完了報告」、「千円札裁判 第一回公判ひらかれる」など。
第3号 → 小山哲男・ちだうい「ディーティングショウ」、福田勝ぽん「1 歩く芸術 ネオ・コミニュケーション 2 くたばれ美術館」、「POP以後の思想と変革-イエスアート論 JACK・ジャックの会キャンペーン」、0次元 加藤好弘「あさいますお遺作追悼儀式典のこと」、0次元出版出版「黒赤金玉袋 堂々創刊迫る 原稿募集!」、「公募 毛穴コンクール」などなど。上記、決して誤打ではなく、印刷されている通りに入力したまでですので、決して誤解のなきよう…。 
なかには田村隆一「詩の実現」、石子順造「美術における近代を撃つために」といった、極めて正攻法(?)な記事もあるにはあるのですが、例えて云えば "ブレーキーの効かないクルマのアクセルを全開にしてアナーキーに突っ込んで行った"とでも云いましょうか、いやはやタダモノではありません。
かくもユニークな存在について、気付かせて下さったお客様にはただただ感謝あるのみです。 

ついてに申し上げておくと、例えばご蔵書の整理の際など、古本屋には買って下さるりとは反対に売って下さるお客様もいらして、そうした旧蔵書から教えられることもたくさんあります。買って下さるお客様、売って下さるお客様、その両方から実にたくさんのことを教えていただける古本屋というのは、思えば商売冥利に尽きる仕事であることよと、改めてそんなことを思っております。
 
■戦後日本の前衛美術を考える上で、「読売アンデパンダン」を避けて通ることができないのは周知の通りであり、第一回分含め、出品目録については何度か扱ってきたことがありましたが、こんな冊子があったとは。現物を手にする機会があって今回初めて知りました。
昭和24(1959)年文学解放社発行、読売新聞社文化部編『アンデパンダン展の解説』の初版本・帯付き。ご覧の通り、わら半紙のような粗悪な紙を使った軽装判と云う典型的な仙花紙本。装丁画は岡本太郎。帯まで残っているのはもはや奇跡に等しいと云っても大げさではないでしょう。
読売アンデパンダンは1959年2月に開幕。当書の発行年月日は開幕日と同じであることから、会場などでも販売されたものではないかと推測します。
読売アンデパンダンと云えば、後にハイ・レッドセンターの高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之の3氏はじめ、ゼロ次元、九州派から吉村益信、篠原有司男、工藤哲己等々、戦後日本の現代美術をけん引した面々が輩出した無審査美術展ですが、そのスタートとなった年に、日本ではほとんど知られていなかった「アンデパンダン展」の意味を解説した当書は、展覧会スタート当時の展覧会出品作家と同じく、荻須高徳、岡鹿之助、宮本三郎、岡本太郎、里見勝蔵など、画壇の有名作家によって執筆されています。
読売新聞社の関係者で唯一、署名原稿を寄せているのが戦前パリのアンデパンダンテン展にも通じていた松尾邦之助。読売アンパンの筆頭仕掛け人とされる海藤日出男の影は、どうやら「読売新聞文化部」と云うカンバンの後ろに隠れておおせているようです。
 
韓国の「たまねぎ男」のことよりアメリカのとうもろこしを何故ああも買わなければいけないのか、配置場所も定まらないイージス・アショアを買ったところでどうするのか、そもそもそれは役に立つのか、表現の不自由展をめぐってその後はどうなっているのか等々、我らがニッポンについて知りたいことがたくさんあるのに、一向に伝わったこないのは何故なのか、本当に不思議でならない2019年の晩夏であります。
 
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66854?page=2&fbclid=IwAR1tuzCQkfj72QK07Sc_9CLSzRozeLlNXyF1sUAQ6FWfQeF952p0aBTSu6k
 
http://tomonken.sakura.ne.jp/tomonken/statement/freedom-of-expression/?fbclid=IwAR28YzJlArvCKe-lfhEvGlKfJHpMxi8Gu1Y9Xp3u3Jf790eXEPOiNf-HG_o
 
http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1074513682.html?fbclid=IwAR2VDFjDOudcm4GUpmhi-2B4Pb3NXHGCWOU6GEV4rkUcGLcN4zJ9vtdZ3kQ
 
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2018112000004.html?fbclid=IwAR1OCkQpgoND9Rwbyn9ELQq8NYQ3muwfWX2EAdBWcopQXEWrir3QoHAtVKo
 
https://dot.asahi.com/aera/2019090300029.html?page=1&fbclid=IwAR0NwhsgmMHDVYyTlriHmZuM6iPMiOgKrhfMFpyIAnyLocqYJ6mWPCg54yk
 
じりじりと、例え1mmずつであっても、より「まし」な方向へと歴史を進めてきた時代は、ここらでいよいよ終わりを迎えるのではないか? …… 日韓朝中米英露その他世界の"首脳"- 首"脳" ですと! - を見ていると、予感はますますそちらへと傾いていきます。世界よどこへ? 明日はどっちだ!?

 

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