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19/11/02 エリック・サティの署名本と本邦初・洋マネキンデザイナーの作品集 !

■久しぶりの更新となりました。これだけ他の仕事を放棄してきたのだから - 実際、店内の散らかり具合と云ったらいまもって空前絶後 … - 目録も一段落かと思われましょうがさにあらず。
依然、作業は続いておりますが、店は来週より火・木・土曜日それぞれ12時~20時の通常営業に戻します。
ご来店のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
 
この間にも新着品は続いておりまして、なかでも「まさか」という大物が入荷いたしました。新着と云うか2012年の5月に販売したものを幸せなことに買い戻すことができて、いまここにあるのが今週の1点目、『スポーツと気晴らし』です。
「スポーツと気晴らし」と云えばエリック・サティの作品として夙に知られるピアノの小品集ですが、この作品が20世紀初頭・フランスの稀代の出版人、ルシアン・ヴォージェルの発案・委嘱によって生まれたものだと知る人は、存外少ないかも知れません。
ルシアン・ヴォージェルは高級婦人誌の草分けで、最新モードのスタイル画にジョルジュ・バルビエやアンドレ・マルティなど売れっ子イラストレーターを起用した『ガゼット・デュ・ボントン』を発案・発行。『ガゼット・デュ・ボン・トン』発行にあたっては、高級誌に相応しいデザインを求めて、オリジナルの活字書体=フォントの開発から始めたとも云われます。
『スポーツと気晴らし』はかくなるこだわりをもつ人物の発案によって構想された出版物であり、ヴォージェルはやはり売れっ子だったイラストレーター、シャルル・マルタンに20点のイラストを描かせ、サティにはこのイラストをモチーフとした新しい楽曲を依頼。やがて戦後の現代音楽へと続いていくサティの実験的な作品は、こうした世に出ることになったというわけです。
さて、小店に戻ってまいりました『スポーツと気晴らし』は、シャルル・マルタンのイラストレーション全20葉がつくている豪華版(1葉のみついている廉価版があります)。ボン・トンのファッション・プレート同様、こちらも全葉ポショワール(ステンシル)彩色によるカラープレートで、当時ポショワールで最高峰の技術をもっていたジャック・ソデの工房が担当したこともクレジットされています。 

限定215部の出版物と云えば、二度目の入荷をそう喜ばなくと思われるかも知れませんが、この1冊を特別なものにしているのは、エリック・サティの献呈署名識語入りである、ということです。即ち"天下一本"。
署名に添えられた日付は1923年1月5日。“古くからの友人 エリック・サティ”よりとして贈られた相手の名前はPeignotさん。アール・デコ最盛期にはカッサンドルの新作書体を製造販売、ヴォージェルとも縁の深かった活字製造販売会社ペニョ社の三代目、シャルル・ペニョことではないかと、その推測も変わらぬまま、7年半ぶりの再会となりました。
こちらは12月発行の「銀座 古書の市」の目録販売と相成ります。
 
■こちらも「銀座 古書の市」の目録掲載品となりました。
『荻島安二作品集』。朝倉文夫に師事した彫刻家で、関東大震災後の再建に村山知義が関わったことでも知られる映画館「葵館」の建物正面レリーフを手掛け、大正14年には日本初の洋マネキンを発表、新時代の彫刻家として将来を嘱望されながら45歳でなくなった荻島安二を追悼して刊行された作品集です。
発行は死去翌年の昭和15年、限定500部の発行。荻島のドローイングをあしらったタトウ紙に彫刻作品28葉、素描10葉、マネキン作品3葉(10図)と目次・巻頭言等1葉(4P)の完揃い
荻島その人については、日本マネキンディスプレイ商工組合のサイトや東文研のデータベースなど、Google先生にお尋ねいただければ色々と教えていただけるかと思います。
国立近代美術館収蔵の「デートリッヒのマスク」はじめ、当時の本邦彫刻家のなかにあって相当にモダンな作風を見るにつけ、この人のことについてこれまで全く知らなかった我が不明を恥じるばかりなのでした。
 
 

もう1点。今年5月、新着品『SHANGHAI』のイラストでご紹介したSchiff(シーフー)による作品集『MASKEE A SHANGHAI SKETCHBOOK BY SCHIFF』
折本仕立て、20図(扉を含めると21図)にわたり、上海の租界周辺の風俗を軽快なイラストで描写した限定本で、当品には「A 397」というノンブルがふられています。
多くの限定本同様、署名があるのは当然として、著者自身によって彩色が施されているのがこの本の贅沢なところ。
表紙は笹の葉を織り出した絹布装で、調べてみると色違いや柄違いがあることが分かりましたが、奥付がないこともあってか観光に関する情報は非情に乏しく、発行は1940年前後、版元は不明のまま。
タイトルの「MASKEE」の意味も分からないでいたのですが、海外の古書店さんの書誌情報のなかに、「a Portuguese word that means "never mind", transformed by Pedgin English(「決して気にしない」という意味のポルトガル語)という記述が出てきました。果たしてこのタイトルが何を意味するものなのか、風俗漫画・風刺漫画を読み取ることの難しさを痛感しつつ、こちらはいましばらく店に留めてその意味を多少なりともつかめればと思います。
 
 

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