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20/01/25 藤牧義夫木版画入り『新版画』と長谷川潔ポショワール挿画入り『LES COLONIES FRANCAISES』

■一週間後にはもう2月だということに愕然としつつ、今週の新着品のご紹介です。
1点目は昭和7(1932)年発行の『新版画 第6号 国立公園特輯号』「新版画集団」のメンバーのオリジナル版画作品を収めて発行した同人誌です。
「新版画集団」とは、「1930年代、自画自刻自摺の創作版画は一定の成熟をみ」ながら、「創作版画という芸術分野のみで自足」する状況に対し、小野忠重らが「"版画の大衆化"を謳って」結成したグループであり、その活動の中心にあったもののひとつが機関誌『新版画』だったと云います。『新版画』には「生活者の視線から近代化される東京の風景が批判的な眼差しで切り取られる一方、地方の無名の若者も多数参加」していました。
*「」内は和歌山県立美術館のウェブサイトより引用
https://www.bijyutu.wakayama-c.ed.jp/exhibition/hanganomaki1_2.htm
モダニズムの流れのなかで人間を疎外する都市を描きだす作品の多い『新版画』で、何故、「国立公園」の特集が編まれたのか? …… というわけで。こういう時は先ずG先生に聞いてみることになります。
wikiによれば瀬戸内海国立公園、雲仙国立公園(現・雲仙天草国立公園)、霧島国立公園(現・霧島錦江湾国立公園)が日本初の国立公園で、指定されたのは昭和9(1934)年のこと。但し、国立公園法の制定は昭和6(1931)年で、『新版画 国立公園特輯号』発行の1年前のことであり、「国立公園特輯」は国立公園法の施行ではなく制定を受けてのいち早い反応だったと見られます。
うぬぬ。1930年代にして早くも都市化への反動意識が現れていたのか?
とすると、一般社会においても「国立公園法」の制定は一定のインパクトをもちえていたのか?
なんてことを考えるのは古本屋の任ではないので、国立国会図書館のタイトル「国立公園」×出版年「1931~1932」でクロス検索するにとどめたいと思いますが、ヒット件数79件の中には阿寒や十和田や黒部といった具体的な地名の入った関係図書・専門調査報告の他に『蒼天に展く : 國立公園候補地航空寫眞集』(大阪毎日新聞社)『アサヒグラフ臨時増刊國立公園號』などもあって、一般社会的関心の高まりの一端をのぞかせているのでした。

『新版画 第6号』に戻ると、オリジナルの版画は15点で(入荷分は2点欠の13点です)うち「富士」をモチーフとした作品が3点、「日本アルプス」他山岳風景が4点、他に十和田、日光、南紀といった順当かつ国立公園指定の下馬評との一致も見られるラインナップ。当号でも注目の藤牧義夫は「やま・やま」(画像一番左)の1点を寄せています
今回入荷した1冊は、佐藤米次郎の「雪光る」と、藤牧とは因縁浅からぬ(と見られる)主宰者・小野忠重の「自殺する殺人者」の版画2点が欠けているのが惜しまれますが、小店程度の古本屋への入荷は非常に稀。古本屋の王道をいく1冊です。

2点目は1931年、フランスで発行された画文集『LES COLONIES FRANCAISES』。フランスの植民地 - アルジェリア、モロッコ、ギニア、マダガスカル、タヒチ、カンボジア、ベトナムなど21の国・地域 - をテキストとポショワール挿画で紹介したもの。
いま扱うと「文化の盗用」といって批判されかれない (?) 挿画21点には、ラブルールの作品と、驚くなかれ長谷川潔の挿画もあり! 画像向かって左端が 長谷川、真ん中がラブルールの作品。
長谷川らしからぬタッチと彩色ですが、田植えをする人をはじめ細部まで手を抜かない描線に、しっかりと長谷川らしさが宿る作品となっています。
小店での扱いはこれで2度目となりますが、かれこれ10年以上前のこと。限定900部は決して少なくはありませんが、長谷川が関係しているとは気が付かないためか、日本での入手チャンスはそう多くないと思われます。
挿画家には日本ではほとんど知られていない名前が多いものの、コロニアル・スタイルやエキゾチシズムが強調されたイラストは粒揃い。ご興味ある方は是非店頭でご覧下さい。

 

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