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21/03/06 1920年代・70年代 芸術の前衛より - 『エポック』と『精神生理学研究所』

■初めて見つけた時の市場ではどのあたりに並べられていたか、誰が落札するのかを告げる発声が聞こえるまでどんなにドキドキしたことか、いまも昨日のことのように鮮明に覚えているのですが、あれは一体いつのことか…とHPで確認すると2008年8月2日付けの投稿が出てきました。
もう13年近く前のお話し。以来今日まで、市場で私が気付いたのは一度だけでその時は落札できず、相当にくやしい思いをしました。この時の悔しさも、誰に、いくらで負けたかも、昨日のことのように覚えています。
捲土重来。3度目の今回はパドルを使った振り市に出品されたのを幸いに、とにかく相手が降りるまでひかないと決めました。覚悟していた腹積もりにはわずかに届かず落札できたのはラッキーだったと思うことにしています。
かくして、『精神生理学研究所』(1970年 東京精神生理学研究所発行)が再入荷となりました。
さて、「精神生理学研究所」とは何ぞや、ということになるわけですが、扉にあたるリーフの記載を転記しておくと…
私達は 各地の参加研究所がそれぞれ個々の取り得る位置で 規定された時空間において同時多発に行為あるいは無行為をもって参加する不可視的美術館 精神生理学研究所を設立しました。/この研究所は 直接的なかかわりを拒否した個人の行為あるいは無行為の記録を 集合 離散させるものです。
つまり、参加した美術家が指定された日時にそれぞれ自分の居る場所で何をしたか/しなかったか で成立するみえない美術館が精神生理学研究所であり、そのようにして一瞬立ち現れた美術館を記録したのがこのリーフ集だということになるでしょうか。集合と離散というのは、各人の行為・無行為が紙の上に記録され、一度は集合してひとまとまりの印刷物となるものの、すぐに作品集として再び各地各所へと散っていく、この記録=作品集のありようを表わす言葉と読むことができます。
いまこうしてみると、いかにデジタル的なありようか (みえない美術館!)、あるいはコロナの時代的な試みであるか (直接的なかかわりを拒否!)と驚くばかりです。
前衛の面白さは、無意識下に時代を先取りしてしまう・先取りしているように読み取れる ところにあるのだと思うのですが - そして迂闊にも、最初に扱った2008年当時は単なるイロモノとしかみていなかったのですが - A4片面刷のリーフ77枚から成る『精神生理学研究所』は、堂々たる前衛に位置付けられるものだと今回すっかり目がさめました。松沢宥も東野芳明も、前田常作、堀川紀夫も、居並ぶ参加名は決してダテではありません。こうなると糸井貫二の太陽の塔の下全裸疾走も堂々たる前衛です。
2008年当時との違いといえば、あの当時はほとんど手掛かりのなかった電子空間に、いまや「精神生理学研究所」を研究テーマとする論文がいくつか見つかって、同研究所ついてはそちらをご覧いだくのが手っ取り早いかと思います。
例えばこちら。
https://www.iamas.ac.jp/iamasbooks/wp-content/uploads/2019/03/Journal_of_IAMAS_Vol.9.pdf 

ついでに2008年最初に扱った時の小店HPのページはこちら。
http://www.nichigetu-do.com/navi/info/detail.php?id=200
それにしても、ですよ。どのプレートもカッコイイというのに。たまたま選んだはずのプレートが2008年と同じだったとは ……
好みばかりはそう簡単に変わらないようで。
成長していないだけか。

こちらは大正期の堂々たる前衛。「日本画家」である玉村善之助=玉村方久斗を中心とする前衛芸術誌『エポック』の創刊号(大正11=1922年 エポツク社発行)が入荷しました。日本画界隈にも前衛あり、というのがいかにも大正時代らしい。
未来派風の表紙画は玉村その人の手になるもので、雑誌としてはA4とB5のちょうど中くらいのサイズですが、表紙から裏表紙に続く見開きでみるとかなりの迫力。この当時、玉村は版画の制作にも精力的に取り組んでいたと云いますので、この表紙にも版画の技法 - おそらくリトグラフ - がとられたものと見られます。
創刊号に寄せた玉村の原稿は「破壊芸術として」。未来派も立体派も表現主義もダダイズムも、新しい芸術を打ち立てようとしているように見えて実は破壊を志向するか、または結果として破壊に向けて突進しているとするもので、論調もまた前のめり。
前衛芸術誌としては美術にとどまらず、巻頭は「英吉利文学研究」だし、巻末はウイリアム・モリスの「世に知られざる教会の物語」の翻訳、途中に「印象派芸術と表現派芸術」を訳文で紹介、多彩な絵画作品図版を引用した「独逸通信(和田氏から)」は山内神斧の寄稿で、「アンナ・パブロア来る」や「海外消息」など短信にも目配りが効いています。
画像にとった図版は無題ながらロシア革命当時の影響色濃い木版画に「芸術革命」の文字まで添えた象徴的な見開き。これもまた玉村の作かと推測しますが、記名も署名もなく断定はできません。
玉村は当誌のあと、やはり前衛芸術誌『ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム』の創刊に関わっており、この『GGPG』がまたバカ高い雑誌なのですが、『エポック』はいまのところ格段にお値段控えめ。戦前前衛芸術関係一次資料は年々出現頻度が低くなる一方で、この傾向にはここ数年でますます顕著に。『エポック』あたりもいまのうちかと。

■今週の斜め読みから。
ニッポンのコロナウイルス対策がどうにもこうにも後手後手でからしき半端なのは全て「オリンピックありき」によるものではないかと勘繰りたくなる点多々あり、「正気」になれば当然この論調にいきつくのではないかと思う次第です。https://courrier.jp/news/archives/235687/?fbclid=IwAR1yp6gcSlZ7R-ZYLXcNbf0JEgREi-JRiHhWOuOAMGNKh4mzFDG-SFlwEDA


 

 

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