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21/07/31 寺山修司と唐十郎をめぐる1975年の印刷物


オリンピック期間中につき、ただいま店はお休みをいただいております営業再開は8月10日(火)とし、8月末まではアポイント制でのご来店をお願 いすることになるかと存じますが、日が近づいてきたところで改めてご案内させ ていただきます。
また、休業期間中もSNS(Facebook、Instagram、Twitter)の投稿は続けておりますので、ご高覧いただければ幸いです。
引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。 

古書の取り引き市場は中高年の店主が多いというのに未だクラスターどころか 一人の感染者も出すことなく従前と変わらず運営されていて、小店店主も変わらず入札会に参加しています。従って、店は休んでいても毎週新着品の入荷だけは続いており、 例えば今週は、子どもの工作作品帖、大正時代~昭和初期・ベティさん他キャラ クター塗り絵のファイルがそれぞれ1冊、江戸小紋柄見本帖2冊、戦前ミニブロマ イド貼込帖2冊などがいまはただじっと出番を待っています。
そうした中から今日のところは戦後のカウンターカルチャー、アンダーグラウンド・アートシーンを象徴するような2点を。
1点目は、いまや戦後日本前衛芸術のなかでも王道に位置付けられた感のある寺山修司率いる劇団天井桟敷の海外公演用のパンフレット。演目は「疫病流行記」 で、1975年にアテネ、渋谷、アムステルダム、ブリュッセルで上演されたもの。
パンフレットは全篇英文で、本文8P。劇団沿革、歴代上演作品概要(スタッフ、 キャスト含む)、寺山修司年譜などで構成されています。
「疫病流行記」の英訳の下には、「作・演出 寺山修司」音楽 J.A.シーザー」の英文クレジットが。これは、「疫病流行記」が「言葉のない演劇」として構想された作品であり、音楽がとても重要な役割を果たしたことによるものです。
初期ピンク・フロイド的とも称されながら幻とされていたシーザーの音楽「疫病流行記」全25作は、初演から45年目の2020年、CDリリースされています。

■2点目は天井桟敷の寺山修司、黒テントの佐藤信、早稲田小劇場の鈴木忠志と並 ぶ「アングラ四天王」のひとり、天井桟敷に殴り込みをかけ、大乱闘を繰り広げ たことでも知られる唐十郎率いる状況劇場の写真集です。
タイトルは『かれらの未知の欲望 状況劇場1971/1973=野崎剛史』。裏表紙には 「野崎剛史写真拾遺」という記載も。発行は1975年で限定200部。当品はそのう ちのNo.3です。舞台写真には唐十郎と看板女優で先日逝去した李麗仙以下、麿赤児(大森南朋のお父さん)、根津甚八、不破万作などの姿も。
著者であり、舞台を追いかけ写真を撮った野崎剛史とはさてどういった写真家なのか…?
本そのものだけでは追い切れなかった可能性の残るその人については、当書に挟まれていた書簡1枚と、この200部の写真集のためにつくられたパンフレットから、多くのことを読み取ることができました。
いくつかのサイトで、「写真家」という肩書を与えられていますが、実際には発行当時、札幌でサラリーマン生活を送っていたアマチュアカメラマンであり、定 価¥2500の記載はあるものの、限定200部は主に知人友人へ進呈、販売は著者による直販売だったようです。
No.3と重きを置く相手に贈られたはずの当書については、自筆の書簡に書きのような記述があることから、状況劇場宛に贈られたものとみられます。
“本来ならば直接お渡しせねばならないころですが 一介のサラリーマンにとっては簡単に上京できかねますので、郵送致します。どうぞご受納下さい。 尚、6部同封いたしますので、劇団の皆様で分けて下さい。” 当書旧蔵者は状況劇場に関係していた人である可能性が高いことを示しています。
野崎氏はその後写真家に転身した可能性はないのか? という可能性にあたるために、例によってケンサクしてみました。行きついたのが「真駒内風良風良日記」というブログです。
ブログの筆者は野崎氏の高校時代からの親友らしく、2009年6月5日、野崎剛史告別式で弔辞を読んでいます。その一節 -「カメラマンに、なりたくて、なりたくて、アルバイトをしたが、お金が足りず、レンズまでは買えなかったけれど、ニコンのカメラのボディだけ買って、宝物のように、いつも大切に持ち歩いていたのも野崎だった」
4年後の2013年6月5日のブログは「野坐忌」というタイトル。「オレは来月、東京に行く。ジューローから電話があり“オレはノザキさんの葬儀に出られなかったけど、「盲導犬」を観劇後、ノザキさんを偲んで一晩呑み交わそう”という話があったわけさ」とあるこのジューローは、唐十郎なのでしょうか。
パンフレットに印刷された著者の写真は、岸辺シローを男前にしたような面立ちで、カメラマンになりたくて仕方なかったひとりの青年がはにかんだような笑顔を浮かべて、いまもこちらに眼差しを向けています。

* 野崎剛史氏については「真駒内真駒内風良風良日記」を参考とし、引用もさせていただきました。プログの主は本或いは古本の近くにいらした方のようで、もしかしたら亡くなられた「くすみ書店」の久住邦晴社長に所縁のあるかたではないかと拝察しています。
無断引用の段、誠に恐縮ながら、お赦しいただだければ忝く存じます。

 

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