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07/12/01 Information

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中山文化研究所が大正12年に発行した絵入り本『コドモのよむ歯の本』はコワカワイイの系統か?

■ここ二週、短期決戦のご蔵書の預かり・仕分けが重なって、首がまわらないのは昨日今日に始まったことではないので慣れましたが、今度は右肩が上がらなくなりました。痛みに負けず来週も店は火・木・土曜の各日12時~20時で営業いたします。今年もはや12月、営業日もあとは数える程度。ご来店のほどよろしくお願いいたします。 ここ数年、古書界で人気のある商品のひとつが絵本。女性古書店主が扱うものといえば絵本。性根のひん曲がった小店としては、絵本は扱うまいと心に固く誓う所以なのですが、がしかし、時にこれは例外とすべしと思うことがあり、『コドモのよむ歯の本』は市場で出会ったそんな一冊。アメリカの医学博士ハリソン・ウエイダ・フアーグソン氏著、中山文化研究所の濱野松太郎氏訳、同研究所が大正12年に発行した歯と歯磨きに関する子供向けの啓蒙絵本です。この時代には珍しく、米国の元著発行元より翻訳権を譲り受けたとの説明があり、中山文化研究所の母体、即ち「クラブ化粧品」の発売元たる中山太陽堂の、いまでいうところのコンプライアンス意識の高さを感じさせます。従って原著の挿画をそのまま使用しているのでしょうが、この絵が歯だけに味わい深い(…笑えない)。歯肉に隠れた二本の歯の根に靴をはき、片手に歯磨き粉を抱え、残る片手で歯ブラシ掲げ、親知らずの隊長以下、切歯・臼歯が大行進……の様子が表紙と見返し二箇所3ヴァージョンで描き分けられています。これら勇者が本文内でも随所に活躍するのはいうまでもありません。勿論、歯の大切さと手入れの実際を分かりやすく解説する内容なのですが、「歯磨き軍の歌」に始まり「歯磨きの歌」で終わるなど、全体に何ともトボケた雰囲気が漂っております。先にコンプライアンス云々と書きましたが、中山太陽堂の企業コミュニケーション戦略については前々からずぅーと気になっていました。例えばこの「文化研究所」では母性保護の冊子をシリーズで発行、「松竹座ウィークリー」に見られる映画とのタイアップに、海外オペラ公演では「クラブ化粧品」の冠を付けて女性客の招待日を設け、「プラトン社」を立ち上げて雑誌『女性』を発行、クラブ化粧品のチェーンストア・システムについては、まるでパソコンで作ったマトリックスの如き全頁カラーの図解で示す…等々。1980年代半ばから約10年、あの手この手と百花繚乱だった企業PRに携わった私ですが、中山太陽堂を見ると「戦前にはもう全部あったんだ」と拍子抜けすると同時に、そのレベルの高さに瞠目させられます。絵本でありながら絵本に留まらず、“モダニズム”という時代がもたらした一冊の書物としても貴重なものだと思います。

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サンドラールとカッサンドルによる『LE SPECTACLE EST DANS LA RUE』とカッサンドルによる『DUBONNET』のプレミア扇子

■ここで重大発表をひとつ。例年、2月か3月に出掛けるパリですが、来年は「パリにはまいりません!」。重大発表とは大げさな、というなかれ。パリ行きが決まった途端に客足が絶え、そうでなくとも低空飛行の売り上げまでさらに落ち込む小店では、これは死活問題なので。何しろ2009年はワケあって絶対にパリに行かねばならぬ。円安・石油高騰など経費増大を考えると一年我慢して再来年に期そうではないか、という魂胆。とはいえパリものの仕入れまで途絶えさせるつもりはなく、今週もパリから新着品が到来いたしました。画像は再入荷した『LE SPECTACLE EST DANS LA RUE』『DUBONNET』のプレミア扇子。ともにカッサンドルにまつわる戦前モノ。『RUE』はサンドラールが序文を書き、カッサンドルとその仕事に捧げられた賛歌のような冊子。中面にはカッサンドルが手掛けた代表的なポスター作品がシルクスクリーン等によって収められています。カッサンドルによるタイポグラフィも見事です。今年パリから持ち帰り、3月3日付けのこのページでご紹介したものに比べると、表紙のダメージが著しく、中面にも僅かながらシミが見られるのが残念。その分はもちろん売価に反映させます。扇子の方はいうまでもなくカッサンドルがキャラクターとデザインを手掛けたもの。オフセット印刷で、しかも最も退色しやすい赤を基調にしていながら、焼けも傷もない完璧な状態です。小店にご来店されたことのある方ならご記憶にあるかと思いますが、店に掛けている非売品の額が、この扇子の片面を剥がして額に仕立てたもの。かつてニューヨークで衝動買いした品ですが、二十数年を経て、やっと本来の姿と対面することができました。会社に勤め、休みの度にパリへ、ニューヨークへ、ウィーンへ、香港へと旅していた当時、まさか自分がやがて古本屋になっていようとは想像だにしていませんでした。新着品を前にして、今週は自分の過去を遡るような気分を味わっています。とはいえもはや潰し「も」きかない古本屋。来週は明治古典会に資料会大市。古本屋よ奮い立て!と右手を挙げれば痛みが走り、これってやっぱり四十肩でありましょうか。 すでにお気付きの方もおられましょうが、「nichigetu-do in GEOGRAPHICA」のページをリニューアルいたしました。年明け1月中にはHPの全面リニューアルも予定。より見やすく、より使い勝手よくと只今思案模索中につき、しばしお時間を頂戴いたします。

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