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10/05/22 ファシズム下イタリアのグラフィック・デザインと日本の未来派 先週の続きも少々


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1940年頃発行の『PRIMA MOSTRA TRIENNALE DELLE TERRE ITALIAN D’OLTREMARE』より。下段左端は表紙。大判厚冊でとくに広告には優れた表現が多数含まれる。テキストの書体、レイアウトもモダン。広告には帽子のボルサリーノ、ロイド・ラインなど交通関係も。

■今週火曜日、店を休んで出掛けた「洋書会大市」は、大市の名に相応しく、政治経済から自然科学まで世界的名著の初版本から古版本など、洋書界の王道古書でひしめいていました。王道になればなるほど手も足も出ず、落札はどこまでも趣味嗜好 - もちろんお客様のではなく自分の - にこだわった3点に留まりました。 パリで開催された浜口陽三の個展図録は小型ですがオリジナルが1葉、署名も添えられていました。20世紀の活版印刷並びにプライヴェート・プレスに関連した資料として『THE  OFFICINA BODONI 1923-1977』。こちらはオフチーナ・ボドニの手掛けたタイポグラフィや組版のリプロダクトを多数所収。(この2点の詳細については、ただいま現物が手元にないため、店に入荷する明日以降の内容確認となります。) そしてこの日、「これが落札できなかったら来た意味なかったかも」というのがコレでした。『PRIMA MOSTRA TRIENNALE DELLE TERRE ITALIAN D’OLTREMARE』1940年5月9日から10月15日までナポリで開催されたイタリア国際博覧会の公式記録集。ここまでなら誰だって入札する時点で分かるというもの。ところが。昨日金曜日に持ち帰り、「ナポリ・トリエンナーレ」なるものの歴史的記述というのを調べ始めたのですがいくら調べても出てこないではありませんか。しかもイタリア語、読めない。困った。加えて。同じイタリア国内では、同じ年の4月18日から6月30日まで、「第7回ミラノ・トリエンナーレ」が行われていて、こちらは国際博覧会事務局による国際博覧会・特別展としての認定付き …… んじゃナポリ・トリエンナーレって一体何! といった具合。で、依然として全然自信はありませんが、PRIMAがfirstで「最初の」、MOSTRAはextentionで「拡張」「増設」、さらに表紙に「第8回」という記載があることから考えて、1940年ナポリ・トリエンナーレはミラノ・トリエンナーレから派生した拡大展の第1回目であり、ファシスト党率いるイタリアとしては、ミラノだけでなくもうひとつの定期的な国際博覧会の創設を目論んでいたのではないか…というのがいまのところの推測。内容的に見ると、あくまでイタリアの国内産業を中心とした経済産業振興に力が置かれたようで、「OLIREMARE」とはつくものの、むしろ国内対策に眼を向けての取り組みだったのかも知れません。と、こんなことイタリアの歴史に詳しい人に聞けばすぐに分かりそうなものでして、尋ねる相手もいないというあたりも小店の限界を物語っております。


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神原泰著『未来派研究』 上段左の函は表に「捧の言葉」(画像平を見せている部分)、裏に「未来派万歳!」を著者がイタリア語で書いてデザインに使用。布装の書籍本体の表側はクービンによるマリネッティ像、裏側はマラスコによる「マリネッティの身振り」。下段左はマリネッティの「ブルガリアの飛行機」(自由語)を神原が日本語に訳出、縦横自在な組版で表現。右見開きは“未来派の自由語による「文学の絵画化」”の事例。

いまひとつ釈然としなくっていけないのですが、ともかくこれを書き終えないといつまでたっても眠れないので強引に先に進めますと、表紙は図版に3Dのような効果を与える深いエンボス加工、中面テキストはレイアウトも書体もモダンの粋、写真や広告表現もそれはもう見事なものばかり… とまあ、どこをとっても手抜きなし・徹頭徹尾の格好のよさ。ファシズム政権下、芸術にせよデザインにせよ後退することなく前に進み続けた ( というか、むしろ予算を好きに使えてやりたい放題というのが真相か ) 戦中イタリア唯一の面目(?)がめいっぱい詰まった1冊であります。
いつもの金曜日の市場でからは、石黒敬七『巴里雀』(函付)とパリ留学記の1口、非常に状態の良い『先駆芸術叢書』は9冊一括で、紙モノでは外国人物写真絵葉書の1縛りを落札。『先駆芸術叢書』では『ロボット』と『電子人形』という肝心の2冊が1冊ずつの出品されており、満を持しての入札だったはずがああっ。と、とっ、とれなかったぁ…。で、どうにかこうにか落手できたのがこちら。神原泰著、大正14(1925)年・イデア書房発行『未来派研究』(初版)。戦前日本の未来派導入期における中心論客・神原の主著のひとつについては、ここでの多言は不要でしょう。ご同業の先輩より「別丁図版の落丁がとても多い本なのでよく注意して」とご教示いただいた所収図版ですが、お陰さまで落丁なし、全体的に見て状態は上の部類。僅かに線引きと、巻末に設けられた「読者索引」に書き込みがあるのが疵。書き込みは編集意図に従って旧蔵者が自分のための索引を書き出したもので、これもまた古書ならではのご愛嬌、と思っていただけるのならこれ幸い、ここから元の持ち主の人となりを想像するのもまた楽しいものではありますが。ぢうでしょう。ところで、『ロボット』と『電子人形』。ご存じの通りこの2冊、同時代にそれぞれもう少し造りの立派な別版が存在していて、『叢書』版かとつい軽く見てしまったのがいけなかった。後で聞いたところによればSF小説として見た場合、『叢書』が日本初訳となるのでむしろ積極的に評価すべきなのだとか。


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上段左はF・ジョルダン / 同中央は左がナタン、右がF・ジョルダン / 同右の2面内右はアンドレ・マルティ(水泳、球技、ダンス、ゴルフ、飛行機、ヨットなどが描かれている) / 下段左の2面内右はF・ジョルダン その後ろ・ブルー2面はともにデュフィ / 細かい柄は江戸小紋などキモノの図案にも応用できそう。いずれも『ETOFFES IMPRIMEES ET PAPIERS PEINTS』より。

古書というのは見方を変え、それを置く場所を変えることで、価値まで変えてしまう不思議な存在に違いありません。落札された方の上札を見てすっかり自信を喪失しながらも、なぜだか清々しい敗北でありました。
■今週店に届いたのをようやく確認いたしましたので、先週の洋書の続きを駆足で。今週の画像3点目は1924年発行の『ETOFFES IMPRIMEES ET PAPIERS PEINTS』、要はファブリック・プリントと壁紙のデザイン集めた図案集です。編者であるレオン・ムシナックはアール・デコ期に多彩かつ影響力をもって活動し、フランスにエイゼンシュタインを紹介するなどとくに映画批評で名前の知られた人のようですが、ここではアール・デコのデザインを扱っています。多色石版刷の未綴じのリーフを見ると、フランシス・ジョルダン、ナタン、ラブルール、デュフィ、マルタン、マルティ、バルビエと驚くような名前が出きて、これも編者の力によるものでしょうか(但し、プレートに欠け有)。この他、19世紀から20世紀初頭にかけフランスで陸続と出版された装飾図案百科のなかでも、道標となったといわれるオーウェン・ジョーンズの『THE GRAMMAR OF ORNAMENT』(但し改装本・プレート抜け有)、アール・デコ期に活躍したデザイナーで壁紙やテキスタイル・デザイン、陶器の意匠で活躍したモーリス・ピラール・ヴェルヌイユの『ENCYCLOPEDIE DE LA PLANT』6冊(1869年発行で図案は具象。各冊12葉の多色石版刷プレート入)、ジャポニズムの影響も顕著なアール・ヌーヴォーの図案集『DECORAZIONI MURALI E SOFFITTE』などを陳列いたしました。主だったところを並べてただいま店内はこんなふうになっております   と、強引に来週の営業案内に誘導して今週の新着案内を終わります。お読み下さったみなさま、本当にお疲れさまでございました( … 来週からはもそっと短く。はい。そういたしたいと。できることなら)。

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