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10/06/25 森永製菓の森永学校の成果『森永ベルトライン』17冊入荷 / 19世紀初頭のロンドンと20世紀初頭のパリの装飾デザイン


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『森永ベルトライン』入荷17冊より。上段左から2点目はキャラメルの空き箱を利用した工作趣味の提案「森永キャラメル芸術」の広告。カニの図版はそのお手本としての作品。下段左端は「四国マネキン・セール」での各地店頭の賑わいぶりを報告したグラビアページ。同右から2点目は「開店するには」と題されたグラビアで、改築前と改築後の店舗外装写真の他、本社スイートガール「ミス・トキコ・モリナガ」の姿も。

■今週の新着品、最初は『森永ベルトライン』。1928年に森永製菓が事業を開始した、日本初といわれるフランチャイズ・チェーン「森永ベルトラインストアー」加盟店向けの月刊PR誌で、同誌創刊年にあたる1929 (昭和4)年より1934 (昭和9) 年までに発行された分の内、17冊が入荷いたしました。各号巻頭には、森永製菓を近代的企業に育て上げ、当時同チェーンストアの本部長を務めていた松崎半三郎の写真と経営に関する寄稿1Pを置き、加入者名、チェーン店用新商品の広告や紹介、経営や販売促進のノウハウなど、いってみればごく一般的なPR誌の構成内容なのですが、何しろ「森永学校」と呼ばれたほどの宣伝部 - 1914年に日本のコピーライターの草分け・片岡敏郎が入社して以来、室田庫造、今泉武治、新井静一郎などを輩出 - を擁した森永製菓のことだけあって、掲載写真に見るイベントや売出し風景、商品に添えられたコピーや店頭陳列のデザイン、そしてPR誌のグラフィックデザインまで、やはりどこか違います。販売促進企画では「映画と舞踊の会招待セール」なんていうのは可愛いもので、さしずめいまならキャンギャルか?という「スイートガール」によるPRや、「マネキン・ガール」を起用したキャンペーン、そのマネキン・ガールに世界各国の民族衣装を着せて店頭に立たせた「国際美人風俗セール」、本当に森永のロゴ入り専用機を飛ばしてしまった「森永号・全国ベルトライン協会訪」、時流を反映してキャラメルの空き箱を有効活用した趣味の提案「森永キャラメル芸術」などなど、内容まで詳しく分かります。この頃にはすでに、21世紀の現在に続く販売促進の手法はひと通り出揃っていたといった感さえあります。各地で催されたキャンペーン毎に人で溢れかえった店頭風景が写真で収めら、見る者必ず“森永ベルトラインの店を開けば儲かるゾ ! ”との確信に至ったとしても不思議はなく、少なくとも古本屋より儲かりそうだと、いまの私が見ても - やや、小店だからか - そう思う宣伝の妙でございます。


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いずれも『ACKERMANN’S REPOSITORY』より 上段はゴシック様式のベッドルーム 中段左はベットルーム用とコテージ用の椅子のデザイン 中段右は“パーラー・チェア”3種 下段は書きもの用の机と椅子の組み合わせ

また、画像でご覧いただく通り、表紙から表4の広告、広告のコピーや中面のエディトリアル・デザインなど、PR誌自体がハイセンスで、“洋菓子=おしゃれ”のイメージ形成に寄与しようとの意図も十分。この当時、森永製菓は、内田誠も席をおいていた明治製菓との間で激しい広告合戦を繰り広げていたといいますが、ともあれイメージが商品価値を左右するという点で、思えばお菓子=スイーツの世界は、いまも昔も化粧品や洋服などモードの世界と似ているのかも知れません。「森永ベルトラインストアー」は、もともと商品販売拠点の囲い込みや、明治製菓をはじめとする競合対策として企図されたもので、こうした宣伝の効果もあってか、1942年に解消されるまでに全国4,000店を数えたといい、この数字にもちょっとビックリいたしました。
脈絡が全然ないゾという2点目は、銅版画手彩色のプレートで、日本では出くることの少ないインテリア・デザインを扱ったもの。下の方にある小さな字を解読すると「ACKERMANN’S REPOSITORY of ARTS & c.PUB」とあり、これに続いて1813年から1814年の年月日が記されています。ここからは例によって検索した結果となりますが、この当時、ロンドンの美術出版者として名を馳せていたルドルフ・アッカーマン発行による月刊誌『ACKERMANN’S REPOSITORY』のシリーズに収められていたプレート - と見られます。19世紀初頭、イギリスで流行を見たアンピール様式の家具は、非常に繊細な銅版画の線描と手仕事による着色とで描かれ、全体にとても優美な印象を与えます。また、同時期、同じ版元から刊行された室内空間のプレートは、やはりこの当時の流行を反映してゴシック・リヴァイヴァル様式がとられており、重厚かつ豪華。こちらももちろん銅版画+手彩色の見事なもの。アール・デコ以降の装飾的要素を排除し、より抽象化したデザインが好きな方には縁遠いかとは思いますが、幻想小説好き、或いはマックス・エルンストのコラージュやエドワード・ゴーリーの絵本が好きな方たちには、おそらく“ど真ん中”のテイストでしょう。また、紙の上に残された繊細な仕事は、好みに関わらず、印刷物・版画にご興味をお持ちの方には一見の価値ありかと思われます。


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『FORMES ET COULEURS』 画像一番手前は専用のポートフォリオ。プレートは全て石版刷りで、1枚に数種の図案を組み合わせて配置している。アール・デコ図案が中心。

元々どういう体裁で発行されたのかが定かではありませんが、ご当地イギリスでもいまはプレートバラ売りが主流と思しいアッカーマンによる“宝庫”シリーズ、小店ではこれが初めての入荷で、今回は家具と室内装飾のプレートだけで約20点ほどが入ります
■19世紀前半のイギリス・アッカーマンから、20世紀前半のフランスへ。100年の間には装飾用モチーフもこんなふうにさま変わりしましたというのが今週の3点目。A.H.THOMAS著『FORMES ET COULEURS』は石版刷のプレート集で1920年頃の発行。もう4年ほど前のことになるでしょうか、全く同じものが一度入荷したことがありますが、この時も今回も発行と同時代に日本に入荷していた痕跡が残されており、また、どちらもプレートに欠けがありました。発行当時の定価に加え、当時日本に入った洋書だとすればお値段も相当張ったはず。こうしたものを購入して、しかも使っていた日本人というのは、一体どんな人で、どんなことに使ったのか、そのあたりの痕跡が残されていればもっと面白いはずなのですが今回も不明。プレート全20枚内1点欠け、かつ、プレート毎に状態に差があるため、今回もバラ売りとなります。
今週はこの他、函付きの『左翼劇場』等戦前舞台芸術関係書15冊食品関係の紙モノの貼込み帖2冊初三郎名所絵葉書約20枚、白ぽいところで翻訳文学書と人文関係書が各10冊ほど展覧会図録2本口、と、何故か戦前のガラス絵コースター&お盆、などが明日には店に入ります。




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