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10/07/10 「明治古典会 七夕古書大入札会」の落札品から。洒落者 J.プレヴェールおじさんのコラージュ作品とユリウス・クリンガーの図案集はともに一期一会モノだと思う。


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画像上段左は表紙。その下は、当書に挟まれていたジャック・プレヴェールが顔を覗かせている同展覧会時の写真。上段右はオリジナル・コラージュ作品の1点目。実際のサイズは表紙の1/2程度(画像では原寸より大きめに処理) 下段右は扉見開きで、左側のページのカラー図版もコラージュが施されたオリジナル作品で、ジャック・プレヴェールの識語署名入り。

■お客様に代わっての代理入札分を除けば、はなからボウズは覚悟の上、後学のために出掛けた先週の「明治古典会 七夕古書大入札会」。事前に発行された目録を見た段階で、「できることならこれだけでも」と念じていた某資料は肩透かし、一方、目録ではほとんど注目していなかったのに俄然やる気になったのが『IMAGES DE JACQUES PREVERT(ジャック・プレヴェールのイマージュ)』でした。私等世代のシャンソンと云えば、真っ先にタイトルが頭を過るはずの「枯葉」の作詞で知られる詩人であり、「天井桟敷」を始めとする映画の脚本を手掛け、戦前よりシュルレアリストや前衛画家たちと親しく交わり、後年には絵本の世界でも才能を発揮 … と、多彩に活躍、どの分野の仕事も未だに色あせることのない魅力を放つ、フランスの才人ジャック・プレヴェールのコラージュ作品を集めた展覧会の図録です。調べてみると、展覧会は1957年、プレヴェール57歳の時にパリのMAEGHT画廊で開催されたもので、当図録には作品19図を所収。これだけなら「俄然やる気」とまでには至らないのですが、表紙を開くと写真が1枚挟まれていて、同展の準備もしくは会期中に撮られたものでしょう、ギャラリー内のカーテンの脇から咥えタバコで外の様子を伺うプレヴェールおじさんの姿が。いかにもパリの街角らしい風景を切り取った写真はもちろん魅力的ですが、しかし、問題はこの次のページから。深紅のマット紙に貼り込まれた作品は、「J.P」の署名も添えられたプレヴェールのオリジナル作品そのもので、渓谷と水面の風景を思わせる抽象表現を背景に、非常に繊細な銅版画が複雑にコラージュされており、さらに白と黒を筆で加えた痕跡までもが未だに瑞々しく残されています。これ即ち世界に1点きり。ここまでくればもうすっかり「俄然やる気」なわけですが、あまりよそ様に知られたくない身としてはあくまで冷静を装って次ページへと進むと、ここからは普通の出品作品の図版 … かと思いきや。これまたコラージュによるオリジナル作品。フランス語による署名、識語も添えられています。つまり、2点もの署名入・オリジナル作品が入った、どう考えても二度と出会うことのない1冊というわけです。ここまで来るともう内心大いに盛り上がっております。気が付くと一人で「うー」とか「あー」とか唸ったりなんかしております。唸りながら長いこと見ていたりするとかえって人目をひくおそれもあり長居は禁物。ここは真剣勝負の札を入れて7月2日(金)、古書会館を後にしました。しかし、翌・土曜日になってもどうにも気になるのはこの本のこと。この日も会館に詰めているはずの親しい方を電話でつかまえ改め札の入札をお願いしたり ( 有難うございました!)、どうにも落ち着かない数日を経て、お陰さまで無事落手できたという次第であります。これだけはしばらく自分で楽しむつもりだったのですが、やはり会場で現物をご覧になったお客様から注文をいただくことができましたので、実はこの1冊、すでに行き先は決まっております。ですが、お客様には小店のたっての願いに快く応じていただき、HP上でのお披露目となりました。二度と入手の叶わぬ1冊ですが、ここに記録が残ればそれだけでもう十分、古本屋、どんなものでも“売ってなんぼ”であります。これゾというものであればあるほど、お客様に買っていただけるようでなければいけません。まだまだ知らない驚嘆・讃嘆の書物・紙モノがこの世に存在し、いつ現れるかも知れないのですから。売りますよ、私は。次なる驚嘆・讃嘆を買うために。


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上段左は二重タトウの内、外側。その下、オレンジ色の桝形が鏡。下段左は付属の鏡を使ってプレートを見た場合の一例。下段右は二重タトウの内側でフラミンゴの図案は外側と共通。これら以外の4点は64枚の未綴じ図案プレートから、リトグラフ刷のプレートの例。

プレヴェールおじさんの右二つ隣あたりに出品されていたこちらは、目録の段階から気になっていた1冊でした。『LA  LIGNE GROTESQUE ET SES VARIATIONS DANS LA DECORATION MODERNE』。タイトル、長いです。日本語に訳すと『現代の文様と装飾画におけるグロテスク様式の系譜とその変容の諸相』。こちらも長い。グラフィック・デザイナーでポスター画家としても活躍したユリウス・クリンガーと、やはりグラフィック・デザイナーだったハンス・アンカーの共著による図案集。ここで云う「グロテスク」は、奇怪とか不気味とかの方ではなく、動植物をモチーフに主に曲線で描かれる文様意匠のこと。奥付かがないためか、資料によって1903年頃とも1905年頃ともされる当書の刊行当時は、ご存知の通りアール・ヌーヴォー様式華やかなりし頃。タイトルに云うグロテスク様式というのはあくまでアール・ヌーヴォー様式の起点として捉えられたもので、要はこの本、当時流行真っ盛りのアール・ヌーヴォーの図案集です。二重のタトウ - 外側は厚紙に紙と布で内張しスナップ留め。内側は厚めの紙で袖と天地の部分を折入れ - に、16×21cmの未綴じプレート64枚を所収。プレートのほとんどがリトグラフで刷られたもの。書籍であれプレート集であれ、比較的大判が多いこの当時の図案集としては、プレートサイズが小さい。ちょっと物足りないか … と思う方もいらっしゃるでしょうが、この本の面白いのは専用の鏡がついているところ。外側のタトウにある収納ポケットから鏡を取り出し、二つに畳まれているのを開いてプレートの上に上手く置けば、あっという間に4倍のサイズでご覧いただけるという仕掛け。例えば、というので画像にも1点、実例を入れておきましたが、図版の反復やシンメトリーな配置が多用されるアール・ヌーヴォー(この点では後のアール・デコも共通するところはありますが)ゆえに生まれた“アっとびっくり”の秀逸なアイデアであります。著者の一人、ハンス・アンカーはベルリンの美術工芸館付属学校やパリのアカデミー・ジュリアンなどで学んだ画家、グラフィック・デザイナーで彫版師。ユリウス・クリンガーについては小店でも以前一度、ドイツで出版された作品集 (こちらのページのNo.60)を扱ったことのあるウィーン生まれのグラフィック・デザイナー。19世紀末からドイツで多くのポスター・デザインを手掛け、雑誌『ゲブラウス・グラフィツク』では特集が組まれたこともある作家。図録『ドイツ・ポスター 1890-1933』によれば、1912年にはドイツ工作連盟の会員となり、1918年には自らの広告アトリエを設立、1920年代にはゼネラル・モータースの招きでアメリカを訪問するなど活躍を続けましたが、1942年、ユダヤ系であることを理由にナチスの拘束を受けミンスクに移送されると以後「消息を絶つ」たのだとか。日本ではあまり知られていないデザイナーの一人ですが、彼の残したさまざまなポスターも当書も、欧州ではいまも高く評価されているようです。こちらの商品は小店で仕入れたものですので、明日以降、店頭でご紹介いたします。「七夕」ではもう1点、やはりレアものを小店商品として落札。こちらはまた改めて詳しく紹介させていただきます。
付記:発行年について、当品に添付されていた印刷物のコピーに発行年を1903年と1905年とする記載がありますが、海外のサイトで調べるとドイツ語版の発行は1901年。今回、小店に入荷したのはフランスの版元によるフランス語版で、旧蔵者のメモ書きに1902年とあることから、こちらも1901年~1902年の間には発行されていたものと見られます。
■今週はこの他、戦前の楽譜・レコード新譜案内等音楽関係冊子1箱辻潤『絶望の書』『ですぺら』(ともに元版)戦前・戦後の写真関係冊子・書籍類25冊などを落札。こちらは運送の関係で来週火曜日に店に入荷の予定です。プレヴェールおじさんは来週にはお客様にお引き渡しの予定となっております。何しろ一期一会もの、こっそりお見せいたしますので、「これは見ておかねば!」という方はお早目にご来店いただければ幸いです。

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