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10/07/24 この堂々たるアナログのエネルギーを見よ ! 山路閑古の個人雑誌『散歩』129冊 と 多色木版刷図案集


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創刊から2号まで、表紙は『週刊朝日』の本文頁を利用。3~5号は和紙と穏当だが、6号以降は洋雑誌が使われたため、川柳、艶話、古本関係の話題などを含む随筆など粋な内容とは少々異質な印象を与えることとなった。但し、デザイン的には何ら頓着された痕跡はなく、あくまで無造作に切り出されたもので、題便も図版を配慮することなくほぼ定位置に貼り込まれている。

■暑中。もとい。酷暑お見舞い申し上げます。頭上からの直射日光に加え、足元からはアスファルトの輻射熱に - 犬種で例えればダックスフント辺りに分類されるかと思われる - 短躯を焼かれて、今週の小店あるじは街を歩く一歩毎に太陽が発している熱量の凄まじさを思い知らされているようであります。表参道駅から小店に辿りつくまでに遭難しかねない。そのせいでしょうか(と、思いたい)、店には本当にだぁれっ~も来ない。こういう時こそ仕事に勤しむべきところ、腑抜けたまんま過ごした一週間。ここらで喝を入れるべく、といっても何のことはない定例の、新着品のご案内です。この薄っぺらい冊子の夥しい数は全て大学で化学を教えたれっきとしたセンセイにして、古川柳や地下本の研究者として知られた山路閑古による個人雑誌『散歩』昭和27年に創刊号を発行、以後延々と号数を重ねて昭和40年の第129号まで、129冊まとまっての入荷となりました。内容はと云えば山路お得意の川柳、艶話に関する紹介や随筆が中心ですが、面白いのが毎号近況報告に代えて掲載された山路の日記で学者兼趣味人としての交遊の幅の広さを伺わせます。いやしかし。古川柳も地下本も艶話も江戸文学も、果ては山路本業たる化学についても、とんと無縁な小店でありますから、入荷の理由は内容ではございません。というあたりが小店の実に表層的なところでありまして ( 威張ってどうする )、というのは画像でもお分かりいただけるかと思いますが、この徹底的といってもよさそうな“個人”誌に費やされたエネルギーにありました。各冊B6、ほとんどが本文三段組み8Pという豆雑誌ですが、54号までは各号色違いの絹糸綴じ、木版刷の題箋を貼り付けた表紙は、そのあたりにあったと思しい雑誌や古紙を切り出して使用。従って、同じ号でも同じ表紙のものはこの世に1冊きり、ということになるわけで、どこまでいってもコンプリート・コレクションの形成は不可能。山路さんたらひょうひょうとした面持ちのわりに人が悪いんだから(って本当か?)。また、デザインなどの作為を排しあくまで無造作に切り出された古紙に、これまたあくまでデザインなど無視して決まった位置に貼られる題箋とからなる表紙は、かえって面白い効果を上げているケースも多く見られます。ガリ版文章には活字文章と違って“そこはかとなく好色味の漂ふ”からといって孔版印刷に入れ込みながら、しかし52号からはあっさり活版文章へと移行するあたりは、個人誌らしい勝手ぶりとでも評しましょうか。


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画像には全て縦型にデザインされたものをとったが、見開きによっては横型にデザインれたものも。キモノの着尺と比べると心持ち幅が狭いようにも見える。見開き15面に短冊型の図案57図を所収。

無造作で自由で、誠に勝手に、しかし自ら書き、編集し、孔版を切り、或いは校正をし、毎号一体何冊を仕立てたものかその一冊一冊に表紙を付け、題箋を貼り、13年間ほぼ月刊ペースで発行されたこの個人誌に費やされたエネルギーのことを考えると、ほとんど眩暈に似た思いに襲われます。私なんぞが毎週一回、作業が深更に及ぶといったところで、パソコンに向かって短時間にデッチ上げている新着品情報なんていうのは、これに比べれば小指の先ほどの努力でしかなく、しかもあと数年もすれば我が身を含めて本好きを自称する人間のかなりのパーセンテージが「やっぱり電子書籍、ラクだわ」なんて云っていかねない昨今の状況を思えば、このようなメディアはもはや過去にしか存在しなくなるのではないかと、実体ある129冊の持ち重りを感じながら自宅に持ち帰った次第です。あ。号によっては挟み込み附録なんていうのも。コンプリートはますます不可能。
うわっ。ここまでですでにA4・1P分の文章量。今週も紹介文短縮のためにもう1点は簡単にいけるもので。昭和11年、京都・内田美術書肆発行の『四季もよう』。図案の縦横サイズのバランスから見て、キモノの着尺や短冊、ポチ袋などに応用できる図案として提案されたものと見られ、画作者は樋下又平という人。 A4より一回り大きいサイズの経本仕立てで、見開きに先ず図案部分を掘り落とした木版一色刷で背景画面を作り( 図案部分が白抜きで残され、エンボス加工に似た効果も )、その画面に短冊型の多色木版直刷の図案が3~4図配された見開き全15面・背景を除いた全57図を所収。画像にはとりませんでしたが表紙ももちろん多色木版刷です。使用された色が最も少ない見開きでも15色+背景色1色の16色、失敗の許されない直刷とあって、この繊細な仕事に注がれたエネルギーもまた膨大。いかに電子化が進もうが、こうした手仕事だけは、やはり実体あるものを通じてしか伝えられないものだと思います。
■今週はこの他、戦前の雑本を中心に「本」が縛りで約21本と大量入荷、建築関係の白っぽい書籍が20冊1930年代映画洋雑誌の合本6冊に、雑多な紙モノが1箱など、合わせてカーゴ2/3台分が明日、店に配達される予定。よりによってこの暑さのなか、どうしてこんなに買ってしまったのか。しかも売れないものばかり。これも全部暑さのせい - と思いたい7月・酷暑の日月堂です。

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