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10/07/31 説明不要の対外広報印刷物 名取洋之助・日本工房制作 折本『日本』 / ソフト輸出の目論見か? 平凡社発行のデザイン年鑑『美 1936』


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上中央は折本の表紙。裏表紙も表紙と同じ銀紙使いで「NIPPON KOBO」とエンボスで入れられている。35曲・裏表70面で、テーマ毎に見開きで1図となるように構成されている。誌面のほとんどがフォトモンタージュで占められる。

■M氏「サトーさん、落ちたらどうします。」NG堂「いや、落ちるはずないから。だいじょーぶぜんぜん。」M「あ。サトーさん。見て下さい。」NG「え。何。」M「落ちてます。」NG「何。うそ。」M「いえいえ。本当ですってば。しかも。上札。」NG「い、いひいひいひ」M「支払い、どうするんですか? 」NG「う。(私が聞きたい)」A氏「いっときに比べると随分安くなったねぇ~」NG「そそっ、そうですね。 ( ウチにとってはまだまだ高いの )」P氏「絶対売れますよ。 時間、かかるけど。」NG「そ? そぉ???( ふん。支払いは来週だい)」K氏「ニチゲツさん、週末にこの一冊かかえてニューヨークに飛ぶんです!弾丸ツアーで帰ってくれば必ず旅費の分が出て支払いにも間に合います!」NG「はは、はははははは(それは無理)」。- 古本屋開業以来苦節に苦節を重ねて14年(ほんとーです)、昨日2010年7月30日の明治古典会で、最終発声で小店の名前が読み上げられるというのを初めて体験いたしました。ちょっと説明しておきますと、最終発声というのは緋毛氈の敷かれた最終台の上に並べられたその週の逸品とされる商品群から、その日最も高値がついたものの商品名と落札価格と落札店名を最後の最後に読み上げるというしきたり。で、冒頭の会話は誰一人として想定していなかった小店の落札で、ご同業のみなさまから賜りました冷やかし半分の、でも温かい、労いの言葉でした(ご心配をおけしております。はい)。間違いなく小店にとっては空前絶後となろうかという体験で落手いたしましたのがこちら。名取洋之助率いる本工房が制作、国際文化振興会が発行した対外広報用折本『日本』。周知の通り、日本の戦中プロパガンダ関係出版物として必ず名前が挙がる一冊です。すでに研究も進んでいるため、細かいことは書きませんが、日本の誇らしい ( 実体は全然、全く違ってたわけですが ) 政治、経済、軍事、文化、生活などを紹介したもので、最低限の紹介文が英仏独の三カ国語であしらわれ、誌面のほとんどは非常に大胆なフォトモンタージュで占められています。発行は1938年3月頃とされており(本体は元々刊期記載なし)、写真は名取、木村伊兵衛、堀野正雄、土門拳、岡田紅陽など構成は熊田五郎(=千佳慕)が担当しています。いまさら小店が何か言及を加える必要もない品物ですが、図録『名取洋之助と日本工房』にある記載との異同だけ記しておきます。①「表紙箔押し文字が青のバージョン(中略)にはキャプションや扉の貼込みがない。」とありますが、新着品=青文字ヴァージョンには扉にタイトル「JAPAN  THE NATION IN PANORAMA」以下、欧文の貼込みがあります。ちなみに今年の「明治古典会 七夕大市会」に出品された青文字ヴァージョンには、図録の記載の通りこの貼込みがなかったので、このヴァージョンはこれまで確認されてこなかったものなのかどうなのか。その辺りは不明です。②裏表紙のエンボスは右下の「NIPPON KOBO」の部分のみで、ものによっては押されているという左下の「国際文化振興会編製」は見当たりません。③図録掲載分で確認れさた中国語の別紙貼り込みは、当品には添えられていません(貼られた痕跡もなし)。- といったワケで『日本』の全ヴァージョンを蒐めようという方にはなかなか興味深い一冊なのかも知れませんが、一体どこにそんな奇特な方がいるものか。ニューヨークにいるのか(いないって)。この一冊に収められた、おそらくは世界的に見ても完成度の高いフォトモンタージュによる表現は、しばらくは我がものとしてつくづく見入ることになりそうです。いやその前に。残高確認!いや金策か?


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赤白二色使いはカバー、その上が本体の装丁。右は福沢一郎による自動車ポスターの試作作品で、「シボレー」の名前が。下見開きの左頁は猪熊弦一郎による観光ポスター、右は東郷青児による香水ポスターの、それぞれ試案。状態極美。

こういう週に限って、最終台手前の方からそれなりに粒揃いの落札品がございまして。小店あるじにとっては今回が初見、従って落札も初めてとなった『美 1936』( 昭和11年、平凡社発行 )。巻頭の「発刊主旨」を簡略化すると、世界中から美術・文化界の資料を集め、その新傾向と考察を迅速に報道することで、日本文化の向上と工業製品等の“世界飛躍”に資する、という目的の下に発行されたもので、一言で云えばデザイン年鑑のような刊行物。例えばイギリスの『STUDIO』の別冊広告特集などと非常によく似た内容と体裁 - 但し、こちらはカバー付き - となっています。また、『STUDIO』やフランスの広告年鑑がその年の優秀広告物を集めているのに対し、『美 1936』では一部海外の優秀デザインをひきながらも、ほとんどが国内の著名画家、デザイナーが当書用に提出した未発表作や試作作品を収めたものと見られます。例えば藤田嗣治による化粧品向きポスター図案、東郷青児の香料ポスター、在巴里・木下勝治郎の壁紙図案、中山巍のティーセット図案(いずれもカラー)、福沢一郎の自動車ポスター(何とシボレーのフォトモンタージュ。おそらく無許可でしょうね。)、川口軌外の布地図案など、錚々たるラインナップ。さらに、『STUDIO』などではカテゴリー別に編集・出版される美術・工芸、グラフィック・デザイン、建築などが、全てこの一冊にまとめられている点も異なるところで、とくに建築については堀口捨己、市浦健、谷口吉郎に山脇巌の実験住宅、レイモンドの吉祥寺の赤星邸宅まで、当時の新鋭・気鋭のオールスターキャストといっても過言ではありません。辰野隆のパリレポートに福島繁太郎によるマチスとの対話なども図版入り、何気なく置かれたように見られるテキストも執筆者を見れば長谷川如是閑、菊地寛、横光利一、室生犀星、堀口大学、岸田日出刀、内田誠等々という力の入れよう。発刊主旨と目次には欧文が併記されており、もしやこの当時、すでにソフト=デザインの海外輸出を目論んでいたのではないか、なんて深読みしたくなるところです。とはいえ、『日本』が発行されたたった2年前、ここにあるのはあくまで“平時”のデザインです。海外にも眼を転じ、世界と折り合いをつけていくためのデザインと云えるかも知れません。これに比べて『日本』は文句なく格好いい。尋常ならざる、度はずれた格好のよさです。ナチスの制服やロシアのプロパガンダ誌『USSR』などでもそうですが、尋常ならざる格好よさの向こうには、やはり何か不穏な思想や思惑が潜んでいるのではないか。少なくとも、そう疑ってみるべきではないかと、このテのものを眼にする度に思います。カッコいいものには気を付けろ - 今年もまた、8月15日が近づいてきました。
■今週はこの他、洋書『ディアギレフ』(リチャード・バックル)等バレエ関係書4冊、所謂『回覧雑誌』1冊、薬品関係の広告を中心に紙モノが小さな1箱、渡航日記を含む前田渼子遺著『花筐』戦前の映画関係研究書12冊戦前映画雑誌『映画創造』『新映画』14冊などが明日には店に入荷いたします。来週からはまた、ワイルド・サイドを歩んできた店の格と、店主の実力欠如に相応しく、控え目に、極々控え目に、そして、脇道から何かをすくい上げるいつもの姿勢に戻って、仕入れたいと思います。それにしても。いつになったら私の上に穏やかな生活というのがやって来るんでしょーか。残高照会!金策?-どちらでも無理。

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