■先ずは忘れちゃいけないご案内から。来週土曜日=6月11日は小店が所属する東京古書組合南部支部の念に一度の大市です。このため、来週の営業は6月7日(火)、9日(木)の各日12時~20時とし、6月11日(土)は当日次第の未定となります。ご不便にご不便をかさねて大変恐縮に存じますが、11日(土)に限っては、お出掛け前にお電話で在席かどうかをご確認いただけますよう、何卒よろしくお願いいたします。
■この人のことを初めて知ったのはまだ3年程前のこと、お客様からのご教示によるものでした。以来何度か『0音』を目にする機会を得ながらも落札できず、今回初めての入荷となったのは、その新国誠一が編集した芸術研究協会(Association for Study of aetts)の同人誌『ASA』で、1号(1965年)と2号(1966年)の2冊です。現在0時をまわっているというのにまだ画像処理が終わったばかりと、作業が大幅に遅れております今週の更新、ウィキペディアからのコピペでご勘弁いただく、というより、より正確な情報を引くと、新国誠一は“1960年代の国際的な前衛詩運動であるコンクリート・ポエトリーの運動に関わり、象形詩や視覚詩、音声詩などの実験的な作品を制作した。世界的には重要な詩人の一人として位置づけられて”いる人。はっきりと明記されている世界的評価のきっかけとなった『0音』は1963年発行の新国にとっての処女詩集で、以後1977年に急死するまで、活動期間は実質15年足らずと短く、出版物もごくわずかで、この『ASA』も12年間で7冊が出版されただけだとか。1号、2号とも新国、新国とともに芸術研究協会を立ち上げた藤富保男、欧文文化圏におけるコンクリート・ポエトリー作家で、新国の評価と活動を海外に広めたピエール・ガルニエなどの作品を多数収めている他、1号には新国によるテキスト「詩について;詩集「0音」補遺」、2号には新国とガルニエによる「第3回空間主義宣言書●超国家のために」、或いは具体詩に関する論考の翻訳、ブラジルの作家と作品の紹介、ダダと前衛芸術に関する同人の寄稿など、今後の評価・研究の上で、おそらく重要な点を含むのではないかと思われる言説も多数所収されています。
ご本人は、“詩と他分野が混成する表現を否定し”“視覚詩を美術との境界領域であると見なされることを嫌”ったそうですが、画像にとった1・2号の表紙や新国、ガルニエの作品を筆頭に、かれらの作品には、デザインやタイポグラフィの点から興味をもたれる方が現れるのは当然のこと。さらに「聴くための詩」では刀根康尚が朗読の際に参加していたというし、同人には一柳慧の名前があります。合計100ページ足らずのこの同人誌2冊に発表した作品や論考を通じ、或いは同人誌の外での活動を介して、詩の存する領域を揺さぶり続けたかに見える新国誠一の活動は、「前衛」と呼ぶに相応しいものに違いありませんでした。
■でこちらは新国とも前衛とも全く無関係に、しかも寸分の隙なく - つまり言い訳できる余地なく - 小店店主の好みだけで落札した本革製のビジネスカバン、但し、「日本色彩社」の営業担当者の専用品だった模様。カラーチップの綴りが10点、ビシッと収まるポケットは、いまならケータイとかスマートホンとかiPotなんかを入れておくのに良さそうです。ファスナーも、収納可能な持ち手も生きていて、まだまだ現役を通せそうです。それにしてもカラーチップ10冊と革製のカバンだけででこれほど重たいとは。しかも、一銭も無駄遣いしているような余裕などないのに、一体どんな人が買って下さるというのか … 非常にアヤシイ。
■今週はこの他、大判の美術・デザイン系の洋書3本、ラベル蒐集帖1冊、多色木版刷の熨斗と熨斗袋(但し扇子や手拭の進物用)一括、などが明日店に入荷いたします。