■2012年も早いもので、下半期最初の新着品のご案内となる今週、20世紀フランスの挿絵本黄金期を代表する挿絵画家のひとりジョルジュ・バルビエが、後に“伝説の”或いは“20世紀を代表する”バレエダンサーと称されることとなるニジンスキーを描いた『DESIGNS ON THE DANCES OF VASLAV NIJINSKY』が初入荷となりました。フランスで発行された340部とは別に、フランシス・ド・ミオマンドルのテキストをC.W.ボーモントが英訳してロンドンで出版した限定400部本の1冊です。発行はフランス版と同じ1913年。フランス版の表紙には淡いピンクとグリーンが使われているのに対し、英国版は灰色がかったブルーと金色が使われているあたり、お国柄の違いを映しているようにも思われますが、肝心のポショワールのプレート全12 葉については仏英全点同一です。
ニジンスキーの活躍の場となったセルジュ・ディアギレフ率いるバレエ・リュスのパリでの旗揚げが1909年。その1909年から当書発行の1913年までの僅か4年の間に、ニジンスキーは当書にも収められている「レ・シルフィード」「シェエラザード」「カルナヴァル」「ペトルーシュカ」に出演、やはり当書所収の「薔薇の精」では跳躍伝説を生み、また「牧神の午後」の振付では賛否両論に分かれての激論を巻き起こすなど、バレエ・リュスの衝撃的な登場に重要な役割を果たしました。ご存知の通り、不遇としか云いようのないニジンスキーのその後の人生-ご存知でない方はgoogleまでお尋ね下さい-を思えば、バルビエの『NIJINSKY』はニジンスキーのとびきり輝かしい人生の一瞬を荘厳しているようにも見えてきます。
昨年の夏以来、何故だか小店、バルビエとのご縁が続いておりますが、そもそも20世紀初頭~第二次世界大戦禅やにかけての“モダニズム”と呼ばれる時代を、集書のひとつの柱にしようと考えるようになった契機のひとつが、今から14年前の1998年にセゾン美術館で見た「ディアギレフのバレエ・リュス展」にありました。モダニズムの幕を切って落としたと云われるのが、何故、パリに現われた異邦人・ディアギレフという男が率いた、たったひとつのバレエ団なのか - 込み入ったことはここには書きませんが、ドキドキしながら見て回った展覧会で、額装された姿で飾られていた『NIJINSKY』を、今回、ようやく自分の手で売ることができるようになったというわけです。
糸綴じの薄冊が英国版の本来の体裁のようですが、新着品は完全に糸綴じがはずれた状態 - つまりプレート状 - のため、バラ売りを検討中。結論は来週の連休明けまでお待ちいただければ幸いです。
■うむぅ~。分からない。何回見てもよく分からない。いえ、洋菓子を中心とした菓子類・果物類の包装紙の印刷見本だってことは分かるんですけどね。戦前、しかも大正末から昭和はじめ頃のものだろうと思う、そうは思うんですが、もしや、ひょっとすると、昭和20年代の後半とか30年代の前半だとか、あのあたりでも不思議はないような気もするんですよこれが。いつ頃のものなのかさっぱり断定できない……う、ううううう。って唸っていても仕方がないし、元来どこそこのメーカーのでもお店のでもない印刷見本でありますから、お客さまにはデザイン重視でお選びいただくこととして、カラフルなお菓子の包装紙から半透明薄紙の瀟洒な包み紙まで同柄サイズ違いを含めますと全部で63枚、ここは先入観なし、あくまでお客さまのお好みでお選びいただければと思います。それにしても画像、派手です。こんなにカラフルなのが多いというのも珍しい。
■今週はこの他、コンサートのチケットや直筆メモのリプリントが添えられたエリック・サティに関する洋書2点1組、画文集『大東京百景』、広田弘毅や高松宮などが登場する昭和初期の外遊写真帖などが明日、店に入ります。