■暑中お見舞い申し上げます。
昨日7月27日の金曜日は、気象庁の観測地点の実に80%超で気温30度を突破したとか。今年も何とも“堂々たる夏!”の到来となりました。熱中症で救急搬送された人、そして亡くなった方の数など見るにつけ、これはもう自然災害、もはや心頭滅却云々の精神論で太刀打ちできる域は超えてしまっていると思います。みなさまどうかくれぐれもご自愛にお努め下さいますように、心よりお祈り申し上げます。
表参道駅より小店までは通常徒歩で約7分、通い慣れているはずの小店店主でさえ、これが夏場だと倍ほどに感じることがあると云います。ご来店にあたりましては途中遭難(!?)などなきよう水分塩分ミネラル分等々ご携帯並びにこまめなご摂取をお心がけ下さい。
大袈裟な?いえいえ、行き着く先がまたオレンジ色した暑苦しい空間なのですから。暑さに滅法弱い小店店主がヨレヨレヘロヘロしながらも、みなさまのご来店を気長にお待ちいたしております。はい。
■少し気の早いお知らせをひとつ。今年は8月12日(日)より17日(金)まで、夏季休暇をいただきます。休暇期間中は店の営業をはじめインターネットを通じたお取引やお問い合わせへの対応、ご蔵書のご整理に関する作業等、すべて休止させていただきます。ご用命等ございましたらお早めにご一報下さいませ。
■今週の新着品は酷暑シーズンのスタートをうけて、ひと足早い季節のお届けです。初秋のキモノの図案デザインをまとめた『色千種 秋景の上』。昭和14(1939)年、河原崎晃洞著、多色木版刷による図案集の出版で夙に知られる芸艸堂の発行です。上製に仕立てた表紙の意匠紙から中面=本文頁まで全て多色木版刷で、全頁片面刷した折帖本20頁に41図を収めています。
著者である河原崎晃洞は1899年生まれの図案家。別名を奨堂、或いは奨洞とも云い、染色・工芸分野の図案家=デザイナーとして活躍。1973年に没するまでに、芸艸堂、内田美術出版といった版元から出版された木版刷の美しい図案集を相当数残しています。
『色千種』でのデザインはあくまで伝統的な図案を基調とした端整な意匠が中心となっていますが、画像上段右の見開きのなかで描かれている水面の大胆な構成や、“ひば”の葉と金色の扇子とを組み合わせたユニークな図案などは、河原崎という人のもつ独自のセンスが充分に発揮されたものだといえるでしょう。神坂雪佳に次いで再発見に値する人 ? …… かどうかはさて措き、涼を呼ぶ秋景41図は店頭で是非ご覧下さい。
■今週の新着品ご紹介はテキスタイルデザインの日仏対決となりました。先週末に店に入荷した大判厚冊が2冊、さらにA4判の厚冊が1冊の合計3冊で、1905年頃から1930年代頃まで使われていたらしいフランスの生地現物を貼り込んだ見本台帳。これまで大抵のものは気合で何とかしていましたが、こればっかりはあまりに大きくあまりに厚いので自宅に持ち帰るのをあきらめ、従って先週の更新に使えなかったという代物。こちらはもう、どう言葉で説明しようとも一見に如かず、というか、サイズや点数などのメモを失念し、本日のところはこれ以上ご説明のしようがないという次第。あ。でもリバティ・プリントのようなオーソドックスなデザインから、画像中の見開き、幾何学柄の上に黒の装飾を施した綿生地など、ヴィヴィアン・ウエストウッドといっても通りそうなアヴァンギャルドなデザインまで、面白い見本帖であることは保証いたします。
この暑さに加えてオリンピックは始まるし、そうでなくとも少ないご来店のお客様がさらにガクリと減る今夏、ご興味をお持ちの方には店頭で心ゆくまでご覧いただけるに違いございません。そうです。オリンピックで熱い夏は、古本屋のフトコロが涼しくなる。これもまた、古本屋稼業16年で分かった真実のひとつであった!(そんなこと威張ってどうする …… )。