■今週は先ず、営業日に関するお知らせを。来週、店の営業は3月14日(木)と16日(土)の2日とさせていただきます。通常なら営業日にあたりる12日(火)はお休みをいただきますので、どうかご注意下さい。週2日の営業という もはや「店をやっている」とは云いづらい - はははははは - 来週ではございますが、ご来店を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
■耳付きの和紙に片面木版刷、それを四つに折っただけの紙ペラ。『詩と版画 建艦献金作品集成 大東亜の花ごよみ一 こまくさ』と題されたこの作品を、当初私は出版広告だとばかり思っていたのですが、調べてみるとどうもこれが立派な本編。尾崎喜八の詩に恩地孝四郎の木版画を添え、この二人を著者として版画倶楽部が昭和18(1943)年に発行したものです。
「建艦献金」という副題が示す通り、当紙1枚の頒布価格50銭の内、15銭を軍艦建造のための献金するというもので、いってみれば戦時体制への協力の一環。ですが、尾崎の「こまくさ」は夏山を彩る高山植物・こまくさに題材をとった至って静かな詩であり、恩地孝四郎の多色刷木版画も こまくさの可憐な姿を写したもので、作品として見れば「建艦献金」とは縁遠い穏やかな作品となっています。それだけに、「建艦献金」の謳い文句は、この小さな作品を発行するための方便だったとも考えられ、恩地による「作者言」中に「急な刊行」とあるあたりからも、出版には何かしらの事情がからんでいたことを思わせます。
『大東亜の花ごよみ』はこの「こまくさ」を第1集として、同じ年の間に第2集「山百合花」(熊谷守一画、佐藤一英詩)、第3集、「紫陽花」(鈴木信太郎画、千家元麿詩)が発行されているようですが、残念ながら小店では未見。タイトルや版画家の名前から推測して、続く2集以降も、表現としてはおそらく戦時色とは程遠いものだったのではないかと思います。
昭和18(1943)年といえば、恩地が『虫・魚・介』『草・虫・旅』を発行した年。主要著作と同年に発表された『こまくさ』は、これらに比べて非常に小さな作品ですが、また、これらに比べて入手の難しい作品でもあります。
恩地孝四郎については今週もう一冊、『博物志』の裸本が1冊入荷します。
■画像の処理も最近はちょっと飽き飽きとしてきておりまして、今週2点目はこれまでとは少し趣を変えてみました。変えてみましたがだからといって捗捗しい効果が得られたわけでもなく何だと云われると返す言葉がない。うう。我ながら、なぁんにも ならなかったな…うっ。
ま、たまには、こんなのも、ということでご海容を賜ることとさせていただきまして、こちらは20世紀初め、アメリカのタバコ会社が発行していたいわゆる「タバコカード」。専用の蒐集帖に、当時の国別の紋章を、ムダにふかぁ~いエンボス押しと金を含む多色刷であしらったカード全48枚を1枚の欠けもなく収めてあります。アメリカのタバコ会社のタバコカード … ファシズムに擬するのは大袈裟だとしても、タバコ狩りの急先鋒・アメリカからタバコが姿を消す日というのも全く来ないとは云いきれない昨今、この1冊ももはや絶滅危惧種への道を歩み始めている気がします。
■今週はこの他、海外ガイドブック10冊が既に、また、米国ブックマッチのカバーを集めた『アメリカン・マッチカバーコレクション』シリーズ3セット、戦前の時計のカタログ、同じく戦前のカメラと周辺商品のカタログ1冊、戦前の旅行専門誌『新旅行』6冊、水引の見本帖他図案集など4冊が明日、店に入荷いたします。
■あれから2年を迎えようとしています。2011年の今頃はまだとても寒かった。今年は一足飛びに春到来といった陽気ですが、被災地の復興も、フクシマの収束も、到底一足飛にびとはいきません。せめて今年は東北にも、花の季節が早く到来いたしますように、心からお祈りいたしております。