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21/07/20 オリンピック期間中臨時休業直前! 「ビュフォンの博物誌」入荷!

■いつもより3日遅れの新着品のご案内となりました。本題に入る前に、今月の営業のお知らせから。
かねてよりお知らせいたしております通り、オリンピック期間中は店を臨時休業とさせていただきます。このため、今月の営業は明日7月20日(火)12時~19時までのみとなります。
営業再開は8月10日(火)を予定しておりますが、感染拡大の状況等を見ての判断となりそうです。
休業期間中もHPの更新やSNSへの投稿などは継続いたしますので、お問合せ・ご連絡などはDMでいつでもお気軽に!
ご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

今週の新着品は久しぶりのフランスの古書、そして小店には不釣り合いな古書の王道ものとなりました。「ビュフォンの博物誌」と呼ばれる大部数の百科事典のうち、四足獣についての記述が続く22巻から34巻までの13巻です。
正式なタイトルは『一般と個別の博物誌(Histoire Naturelle, Generale Et Particuliere)』。初版刊行は1749年で1巻目から大ヒット。著者であるビュフォン(Georges Louis Leclerc Buffon)が38巻まで著し没した後、植物学者ラセペードが書き継ぎ、44巻まで発行されました。
ビュフォンは長くパリ王立植物園園長を務めたフランスの博物学者ですが、「啓蒙思想家」との肩書を与えている百科事典の記述も多く、とくに「自然は動植物の種を含めて徐々に変化をとげると考えて、のちの進化論形成に影響を与えた」(ブリタニカ国際大百科事典)ことから進化論の先駆者とみなされているとありました。ビュフォンとその博物誌は多少知ってはいましたが、まさか進化論の先駆者だったとは。科学者のお話しには謙虚に耳を傾けたいものです(とくに某国政府のみなさまには)。
ラセペードの後も増補改訂は続けられ、なかでも博物学者ソンニーニ(Charles-Nicolas-Sigisbert Sonnini de Manoncourt)は1799年から1808年まで約10年を費やし増補改訂。127巻からなるソンニーニ版が出版されました。
今回、小店に入荷した版がこのソンニーニ版ですが、刊行年度部分にある記載は「A.N.VIII」。さて、A.N.とは何年なのか? 何を指すのか? 調べてみるも全く分からず。それでも「A.N.VIII」でそのまま検索して出てきた数字(1799)、ソンニーニ版の刊行期間にあたる1798-1808年、フランスの古本屋が手書きで書き付けた「1802」という数字など考え合わせて、1799年から1802年前後に刊行された版と見て間違いなさそうです。
挿画は初版当時より四足獣を担当したジャック・ド・セーヴ(Jacques de Seve)の手になるものを引き続き転載しているものと見られますが彩色はなし。 

wikiに紹介されている38巻本の内容と突き合せてみると、今回入荷した13巻がカバーしている範囲は38巻本の第4巻から15巻まで、12巻分と重なっています。
テトキストには各巻それぞれ後に追加されたと見られるページが随所にあり、全体としてはまるまる1冊分の増補改定分が追加されていると見てよさそうです。
ご覧の通り、本文に使われているのは全て手漉き紙でほとんどが耳付き。軽装判の表紙の紙も良い味を出していますが、本文用紙のサイズが全て違うことで生まれる小口側から見た時の紙の束としての存在感も見逃せません。

■内容について見ていくと、22巻は馬とロバ、23巻は牛、羊、ヤギ、ブタ、犬、24巻は猫、鹿、ウサギと、人に使役する動物、或いは人の食卓に上る動物(!)から始まる編集構成自体、実に面白いものです。また、例えばネズミでも野ネズミやハタネズミは25巻に登場するのにドブネズミは26巻に一拍遅れて出てきたり、蝙蝠があちこちの巻で観られるなど、身近に存在していた生物がいまとは全く異なっているといった変化もみてとることができそうです。
キリンとその骨格、へその緒がついたままのカバの赤ちゃん、木の実を食べるリスの姿など、あくまで博物学的観察図がある一方で、背景にはその動物の生息域にありそうにない風景・建物などが描かれているなど、よく見ると突っ込みどころも多数。そして謎の生物も居て、なるほどこれは面白い! というのが個人的な大発見でした。
ビュフォンによるテキストは論文調というより文学的との指摘もあり、フランス語が読めればどれだけ楽しめたことか!
図版は犬が最も多く、また巻によってバラツキはあるものの、1冊におよそ15~20図、13冊で200点を超える挿画が収められています。
それにしても何故ビュフォンを買ったのか?と云うと、ここ数週間、欲しいものが何もなかったこと、この札で落札できるはずがないと思って入札したら落札できてしまったということ、つまりは実に消極的な理由による入荷となりましたが、教えられることは多く、つくづく買ってみるべきものだと思いました。「買ってみなけりゃ分からない。」昔から同業諸先輩に聞かされ続けた箴言です。
実は古本屋にはもうひとつ深く刻まれている言葉があって、「そこから先は我慢比べ。」というのなんですが、さて、この13巻全部欲しいという人が現れるのは果たしていつの日のことになるものやら。炎天下にも関わらず我慢比べの開始であります。とほほ。

■今週の斜め読みから。
景観破壊問題に始まり盗作、セクシャルハラスメント、ルッキズム、忖度挙句に虐待まで、そうそう揃うことのない愚行で塗り固めた世紀の祭典があと少しで始まります。
ワクチンは遠くマスクは暑い。みなさまどうかくれぐれもご用心下さい!

https://mobile.twitter.com/hirokim21/status/1416359306857910286?s=04&fbclid=IwAR3_byOYCE0m0n0olx_ADQSRlstZyJdLLbccPOQP9Nrn69oBoaoly1jXA8g

https://news.yahoo.co.jp/articles/0ebf62db6b93220b6eb769f5fd8b850bec22a651 

 

21/07/10 戦中物件ふたつ - 満洲と隣組と。


■先週お知らせいたしました通り、オリンピック開催により、表参道周辺では人流の増加、交通規制や物流の停滞等が予想されることから、オリンピック開催期間中、店の営業は休業いたします。
このため、2021年7月の店の営業日は残すところ 7月13日(火)、15日(木)、17日(土)、20日(火)の4日だけとなります。営業時間はそれぞれ12時より19時です。

また、12日より4度目の緊急事態宣言発出により、上記の4日についてはアポイント制とさせていただきます。ご来店の際には予めご予約をお願いいたします。
入店時には不織布マスクの着用と店内入り口での手指の消毒をお願いいたしております。
ご不便をおかけいたしますが、ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

これまた先週もお知らせした通りですが念のため再びお知らせ。
営業再開は8月10日(火)を予定しております、コロナウイルスの感染状況によっては、そのままお盆休みに入ることになるかも知れません。
オリンピック開催に伴う臨時休業期間中も、HPの更新やSNS(Facebook、Instagram、Twitter)への投稿は続けますので、営業に関する最新情報についてはHPまたはSNSでご確認いただけますようお願い申し上げます。
ご面倒かとは存じますが、何卒よろしくお願いいたします。
尚、パラリンピック開催期間中の営業については会期直前の状況をみながら改めて判断いたします。

■ここまで絵に描いたようなプロパガンダ誌は久しぶりの入荷になるかと思います。1937(昭和12)年、満洲帝国の首都として新都市開発が進められた新京建設第一期五ヵ年計画完成を記念してつくられた『躍進國都』が入荷しました。バリバリのグラビア誌であります。
満洲帝国政府」名により、満洲・興亜印刷局から発行された『躍進國都』は、テキストが全て中国語と英語併記であることから、対外宣伝を目的として制作されたものであることが分かります。
仰角のカメラアングル、無機質な撮影対象の多用、労働者の力強さの強調、過剰なほどのフォト・モンタージュなど、後の東方社の『FRONT』、さらに、そのフロントがお手本にしたというソビエトの『USSR』と実によく似た表現のオンパレード。また、ページ構成の面では、グラフ・モンタージュの影響もみられます。 

判型も『FRONT』と同程度の大判で、左右観音開きで全景を俯瞰した「第一期完成之國都新京」の迫力はご覧の通りのスケール。
ここではとりませんでしたが、映画街、夜間のネオンサイン、亜細亜号、学校生活、住宅街の優良物件など、風俗文化、日常までに取材。情報量としては『FRONT』を上回るものと思われます。
惜しむらくは写真や編集など、制作に関係した具体的人名に関する手掛かりが全くないこと。とはいえ、満鉄嘱託としてポスターの世界で目覚ましい成果を残した伊藤順三といった人材が、当時、大陸に渡っていたことを考えると、このくらいのグラビア誌が満洲の地でつくられたということについては、何ら不思議はないものと思われます。

このかわいらしい「マメカミシバイ」というのが、銃後の正しい生活をまっすぐ疑いなく説く内容であるがゆえに、いま読むと何とも言えない気分にさせられる物件でありまして、収納用紙挟みの表側・表4と、内側全面に龍角散の広告が入っていることから、龍角散のノベルティとしてつくられたものと見られます。
刊期の記載はありませんが、『マメカミシバイ ドウブツトナリグミ』というタイトルから「隣組」が制度化された1940年から、慰問袋が廃止されたという1943年頃までの間に使われたものと見られます。
「マメカミシバイ」が示すように外形が6.5×11cm、紙芝居本体は5.5×7.5cmというスモールサイズ。おはなしも6枚で終了します。
隣組の寄り合いで、「このお国の非常時に何かお国のためになることを」と話し合った動物たちが、健康のためにラジオ体操をしたり、防火用水を備えたり、空き地を耕し野菜をつくり、慰問袋を送るという、当時としては正しい日々の過ごし方を至ってシンプルに教えるものです。
国内の製薬会社では、戦意高揚に力を貸すべく、戦争関係の生徒・児童向けの読物など、陸続と発行した会社もありましたが、龍角散のものは初見。商品の性格がみても、今日まで残ってきたことの方がむしろ不思議に思えます。こんなふうにいま残っているのが不思議なものと出会えるというのもまた、紙もののもつ面白さのひとつだと思います。

■今週の斜め読みから。
なるほど! と、いたく納得。
https://twitter.com/levinassien/status/1413387215061741574?s=04&fbclid=IwAR2biUzdsRZnRfpAgOdZLaxMklOGMOjBlOqGXXIo-qzOcuk7Tzn85Ejqc_w
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21/06/28 エフェメラの集合体 ! 『東京画報1』と『ぬりえ』


■まる2日遅れの更新となりました。体調不良でも何でもなく、金曜夜の数時間PCが全く使い物にならなかったせいで、店主、至って元気にしております。ご安心下さい。
さて、今週も営業スケジュールのお知らせから。
コロナウイルスの影響で、昨年は中止となった「明治古典会七夕古書大入札会」が今年は7月2日(金)から4日(日)にかけて開催されることとなりました
これに伴い、今週の店の営業は6月29日(火)・7月1日(木)の2日、それぞれ12時より19時まで、7月3日(土)は休業とさせていただきます。
アポイントは不要ですが、店内のお客様の数は3名様までとし、それ以上になる場合は入店までお待ちいただく場合がございます。
また、入店時は不織布マスクの着用と店内入り口での手指の消毒をお願いいたしております。
ご不便をおかけいたしますが、ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

オリンピック開催にともなう競技場周辺の交通規制や物流の停滞、各競技場に向かう乗換等、表参道駅の利用頻度が高まることなど、表参道駅とその周辺は混雑が予想されることから、オリンピック開催期間中とその前後にあたる7月21日(水)より8月9日(月)まで、店は臨時休業いたします。
8月10日(火)には営業を再開したい考えですが、コロナウイルスの感染状況によっては、そのままお盆休みに入ることになるかも知れません。
オリンピック開催に伴う休業中も、HPの更新やSNSへの投稿は続けますので、営業に関する情報も随時お知らせいたします。
ご面倒かとは存じますが、ご来店の際には必ず最新の情報をご確認いただけますよう、どうかよろしくお願いいたします。

*パラリンピック開催期間中の営業については会期直前の状況をみながら改めて判断いたします。

■申し遅れましたが「明治古典会七夕古書大入札会」は一般の方々にも古書入札会の会場で商品を実際にご覧いただこうとの趣旨から、一般プレビュー(下見展観)日を設けています。実際の入札については、ご依頼いただいた古書業者が代行して行いますが、古書市場のしくみの一端をじかに目にする機会として、また、いずれの出品商品も実際に手にとって御覧いただける機会として、毎年開催を楽しみにしているお客様も多い催しです。
一般プレビューは7月2日(金)10時~18時、7月3日(土)10時~16時
下記のアドレスで会場その他開催概要と、出品全点を画像でご覧いただける「出品目録」が公開されております。是非ご覧下さい!
https://meijikotenkai.com/2021/
 

今週の新着品は、2点とも、紙モノの集合体といったつくりの私的な刊行物。どちらも2度目か3度目の入荷ですが、珍しい部類の刊行物です。
画像1点目。筒函の平に認められる「東京のテクスチュア」は副題で、正式な書名は『東京画報1』副題はもうひとつ「視覚的な触覚作業集」という言葉があてられており、この刊行物を制作した「和光大学芸術学科《東京画報》編集室」に参加していた学生さんたちの目論見と具体的作業とが明示された格好です。
A4を二つ折りした未綴じ・72枚からなる東京をモチーフとした作品集で、発行は1970年代(この方の調査にはまず間違いがないと思われる同業先輩によれば1974年頃の発行のようです)。
30人の学生によって制作された作品は全てフォトモンタージュによるもの。敗戦後約20年。高度経済成長下、新旧入り混じりながら刻々と変化する東京の街の姿には、当時まだ子供だった私にも、確かにキッチュで猥雑な側面が多分にあったような記憶があります。この作品集には、あの当時の東京の空気を伝えるには、フォトモンタージュという手法以外にあり得なかったと思わせるだけの説得力があると思います。あくまで私見ですが。
「小柳ルミ子ショー」や「ノストラダムスの大予言」の看板、積み上げられたブリキのゴミ箱、東京観光ご一行様記念写真、街頭の町内地図、落書きされたベンチ等々、当時の東京の片隅にあった風景が丹念に拾われている点では、1970年代の「考現学」ともなっていて、細部まで丹念に見て行きたくなる力作です。

■こちらもやはりA4を二つ折りにした未綴じのリーフ80枚からなる作品集。32Pの冊子とともにアクリルのケースと筒函に収めたもの。著者は編集者でエディトリアル・デザイナー、写真集の著書もある田淵裕一。1972年の発行で、部数等詳細は分かりませんが、私家版としての発行でした。
80枚のリーフには、いずれも線画が1色で印刷されていて、著者は、この私家版を手にした人は「なにかしなければならない」としています。何かしたものをどうするかと云うと、田淵に返送してくれとあり、田淵のもとに届けられた「なにか」されたものを集めて小冊子をつくる-田淵には、一種のメーリング・アートのような構想があったようです。そのため、田淵自筆の宛名書きに切手まで貼った返送用の封筒付き。詳細は相変わらず分からないものの、著者とごく親しい人たちに限定して贈られたものと見られます。
ぬりえの対象となる図版は日本の国旗のように分かりやすいものから、どう塗れというのかとまどうような住宅間取り図の集合、塗るというより書いた方が良さそうな原稿用紙や熨斗紙など多種多様。こうした多様なセレクト全体で「ぬりえ」というひとつの作品を構成しているのだと云えるのでしょう。
それにしても『東京画報1』と『ぬりえ』の2冊。体裁もボリュームもよく似ているのは単なる偶然なのか何かしらの必然なのか。その辺りにもまた、いまは見えなくなってしまった何かの「線」が見えてきても良さそうな気がするのですがさて?

もひとつお詫び。今週は「七夕」のために更新は1回お休みさせていただきます。来週は火・木・土曜日の12時~19時で営業いたします。悪しからず!
 

 

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