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18/09/29 戸田正三 留学時代ノ絵葉書出現ス ! 日月堂店主 暫シ渡航ニ就キ …。


■詳細は先週の更新冒頭部分をご覧いただくとして、来週の資料会大市~1年ぶりの渡航~帰国直後の市場復帰で少々長めのお休みをいただきます。
本日9月29日(土)は通常営業。10月2日(火)と10月13日(土)は未定のため、ご来店に際しては必ずお電話で在席をご確認下さい。
9月30日(日)、10月1日(月)、10月3日(水)~12日(金)は休業となります。
複雑怪奇なスケジュールですが、どうかくれぐれもご注意下さい。
尚、旅の経過を、Facebook「古書 日月堂」とInstagram「nichigetsudo」で時々お知らせできるかも知れません。ご興味の向きにはフォローいただければ幸いです。
ここのところの気温の乱高下に体が追いつかず、この数日、少々体調不良でありまして、来週、資料会大市連日二日参戦の足で羽田? というのが我ながら信じがたくなってきております。いや、這ってでも行くんですけれどね。
にしても、寄る年波には勝てない。この言葉の意味を噛み締めながら今週の新着品のご紹介へとまいりましょう。ただいま深夜の1時45分。それでも意地で続けるようなことを「年寄りの冷や水」と云います。お陰さまで自覚だけはある。

絵葉書を絵柄で買ったのは先週の高橋春佳が久方ぶりのことで、近年はもっぱら渡航中の日本人が出した絵葉書専門となっております。入札する段階で どういう人だっか しかと分かるケースは稀で、落札した後、差出人・受取人の名前や年代、住所、渡航先や研究機関名などからどこのどなたの旧蔵品か確定していく、というのが通例。
なかには全く名前の残っていない人も居て当てがはずれることも間々あるので困ったものですが、今回は当たりだったようでほっと安心。
日本軍の歴史に興味のある人であれば知らないはずのない731部隊との関係が近年明らかになりつつある戸田正三が、大正2(1913)年・28歳~大正4(1915)年・30歳の頃、留学先のロンドン、パリ、ベルリン、上海などから兵庫県朝来郡中川村にあった夫人と思われる女性に宛てて投函した絵葉書73通を落手しました。
ポストカード専用のアルバムには、絵葉書の他、ロンドン大学生理化学研究室やボン大学、週末を過ごしたロンドン郊外で撮影したものなど、簡単ながら本人の手でメモ書きを加えた写真の貼り込みもあり、日本帰国後に本人が整理、大切にしていたものと見られます。

戸田正三は京都帝大卒後4年間の留学を経て、京都帝国大学衛生学教授に就任。出身大学を同じくする731部隊の石井四郎と親交があり、多くの軍医を731部隊に送り込んだほか、731部隊から現在の金額に換算して2億円を超える研究資金を受け取っていたとされています。また、1939年(昭和14)京都帝国大学内に興亜民族生活科学研究所が設立されると所長に就任、自身が731部隊の実験に携わったかどうかは不明とされていますが、満洲・中国に度々渡航、国策に積極的に協力した人物と見て間違いはありません。731部隊への人材派遣や資金流用については、NHKのドキュメンタリー番組の中でも詳しく取り上げられていたかと思います。
今回落手した絵葉書は留学や遊興に関する至って穏当な身辺報告が主な内容ではありますが、留学先での日本の同僚や友人の名前が比較的多く散見される他、遊興先に同行した日本人が加筆したものや、戸田の行く先々での風土・社会等への感想、芸術に対する理解や国家観をうかがわせるものもあり、戸田の交友関係や人物を探る上で何かしらのヒントを与えてくれるのではないか……? と思うのですが、なかなか読み辛い部類の手蹟と現段階ではたかだか数時間向き合った程度なものですので、そのあたりの保証については6~7割程度とお見積りいただければ幸いであります。

こちらは簡単に。芸艸堂の木版刷のテキスタイルデザイン集『染織大鑑 染之部』の一と三の2冊。大正3年の発行で片面刷で1冊につき見開き16面。図版にとったのは見開き縦位置で1面という変則的なとりかたをしたページで、横使いで3~4図を収めたページもあり、紙面構成は変則的。明治期の芸艸堂の図案集と比べると、むしろ少々大人しく保守的な図案のようにも見えますが、「籠目に罌粟」「櫻繋き青海波」など、組み合わせの妙やネーミングの冴えなど、芸艸堂の名に恥じないぬかりのなさであります。 







18/09/22 日本の図案二題 … 約20年を隔てた津田青楓と高橋春佳の作品

■今週は仕分けと出品2件に加え、パリから一時帰国していた知人と彼の地のアンティークショップに置いてもらえそうな商品を選び、これ以上望むべくもない方に時間を割いていただいて英仏文書翻訳整理の作業を一気呵成に片づけ、合間に新調の必要に迫られていたスーツケースを調達し …… と、ガチガチのスケジュールで少々疲労困憊。新着品はできるだけ説明不要なものを、点数も2点に絞ってのご案内です。

■あ ! お知らせがひとつ。10月3日(水)・4日(木)は資料会大市のためお休みをいただき、4日(木)は市場から帰宅するとその足で羽田にまわって5日(金)に日付が変わった直後、昨年7時間の足止めをくらったのと同じエミレーツ航空でドバイへ。さらにエミレーツを乗り継いでウィーンへと向かい、5日(金)から10日(水)をウィーンとプラハで過ごして11日(木)帰国。12日(金)には帰国早々市場二か所あって直ちに仕事に復帰する予定です。
長くなりましたが一体何が云いたいのかといいますと、要は10月3日(水)より少なくとも12日(金)までお休みをいただきます。ということでありまして、例によってご不便をおかけいたしますが、何卒ご容赦のほど お願い申し上げます。

高橋春佳の名前は、古書周辺の方たちより、絵葉書コレクターの間での方が圧倒的に有名。何しろ絵葉書ばかりか絵葉書の袋の図案もあまた手掛けたイラストレーターにしてグラフィックデザイナーであり、どうやらディズニーのキャラクターものから非水風のデザインまで、作風的にも非常に守備範囲の広い人だったようです。
今回入荷したのは全て未使用の年賀状9枚で京都の青旭堂が版元。 
ご参考まで、青旭堂さん=現在は京都・山口青旭堂さん=のウェブサイトでは、ギャラリーのページを設け「大正末期から昭和初期にかけて、山口青旭堂で製造しておりました製品を」紹介する中で、春佳の作品を紹介しています。アドレスはこの下。
http://seikyokudo.co.jp/gallery201804/

今回入荷した年賀状の春佳デザインは、ロシア・アヴァンギャルドとアール・デコとが相半ばするもので、大向こうから「これぞニッポンのモダニズム ! 」と声をかけたくなる出来、とでも云いましょうか。ミッ〇ーマ〇スのデザインにしても、キャラクターをいきいきと描いて達者な人という印象でしたが、今回のこのシリーズでその印象はますます強くなりました。
同じような分野で云えば小林かいち がすでに充分高値がつくようになった現在、それと比べて春佳の評価はまだまだ全然それほどではなく、かてて加えて作風の点でも守備範囲が広かった分 仕事の量も多かったようで、春佳もの、どこに転がっているか分からないというところを含め、いまからでも蒐め甲斐のある作家ではなかろーかと思います。

現代人にとっては少々読み辛い文字でタイトルとして『華紋譜 花之巻』と表紙に書かれておりますこちらはと云えば、明治32(1899)年に京都で発行された津田青楓による木版刷の図案集。和綴じ40ページに、48図を収めています。
津田青楓の図案集についてはこれまでも何度か扱ってきましたが、この作品集は関西美術院に入学し、浅井忠と鹿子木孟郎に日本画と洋画を師事しはじめた頃、フランス留学以前の作品であり、全体にまだまだ古臭くかつ生硬な印象はあるものの、中に時々フランスのアール・ヌーヴォーを思わせる優れた作品が現れ、その豊かな才能の片鱗をうかがわせています。

■今週はこの他、昭和45~50年頃に横浜方面で撮影された鉄道・路面電車の写真ベタ焼きファイル5冊大工仕事の基礎を図版で教えた明治期の和本類5冊が入荷。また、昨日店に入った大量の背革装の古い洋書については、目黒のアンティークショップに入れるべく値付けに入る予定。目黒に運び出す前に小店店頭でご覧になりたい方は、少々急ぎ気味にご来店いただければ幸いです。 

注意!!!  来月より「銀座 古書の市」の目録作成作業に入ります。現時点ですでに数か月お取り置きになっている商品で、今月中にお支払いが確認できない商品、もしくは今月中にお支払いの目途をお知らせいただけなかった商品についてはキャンセル扱いとし、目録への掲載或いは店頭へ再リリースさせていただくことがあります。予めご承知おきいただけますようお願い申し上げます。

 

18/09/15 モダニズムを学ぶ学校とモダニズムを志向した学校建築 そしてバウハウス

■瞬く間の一週間。先週の土曜日からこちら、なかなか面白いものの入荷が続いており、3回くらいに分けてのご紹介となりそうです。今回の更新はその第1回目。
先ずは「造形芸術雑誌」を標榜した構成社発行の雑誌『建築紀元』。偶然が重なり、発行された全5号のうち第1巻第2号と同第3号の2冊が入荷しました。ともに昭和4(1929)年の発行
第1年第2号は、この雑誌の中でも夙に知られる「バウハウス特集」で、初めからおしまいまで1冊丸ごと&徹頭徹尾バウハウスで編まれています。一度見たら忘れられない表紙のデザインは同誌の編輯委員でもある堀口捨巳。
堀口の他、板垣鷹穂、岸田日出刀、仲田定之助、坂倉準三、吉田謙吉など錚々たるモダニスト(!!!) が編輯委員に名を連ねた『建築紀元』は、日本のモダニズム=当時の新しい芸術や造形美を考える上で、欠くべからざる言説空間です。
話は「バウハウス特集」に戻ります。岸田による「バウハウス」という記事に始まる特集は、ドイツのタウト・ホフマン事務所で働くことになっていた牧野正巳のバウハウス訪問記「バウハウスを観る」、近代建築作家を訪ねてロシアから北欧を経てベルリンに入った今井兼次が実際に面会をとりつけて会うことのできた「グロピウス訪問記」など、日本人が実際に触れ得たバウハウスの記録を交えながら、建築工芸研究機関としての役割、シュレンマーやモホリ・ナジについての研究、バウハウスにまつわる理論、理念、そして教育機関としての教程、さらにはバウハウス叢書の解題や関係文献の一覧まで 流石! の充実ぶりです。
もう一冊、第1巻第3号はぐっと地味な内容ながら、「建築の出動」「エア ポート」といった記事が並びます。 

さて、当誌を主力の媒体のひとつに据えていた構成社は、1929(昭和 4 )年 9 月から1931(昭和 6 )年 6 月までの約 2 年でその活動を終えることになりました。この雑誌、うけていたらもう少しは続いていたのではないかと思います。あ! 出版当時の一般的な評価と、後世古書になってからの評価は必ずしも一致せず、というのはよくあるお話しなので。ええ。はい。ま、ええーっと、そうですねえ、そうお安くはない…

■2冊目は『横浜市復興小学校建築図集』。昭和6(1931)年に発行された写真図版中心の書籍です。
復興、と云うのはもちろん関東大震災からの復興の意味で、ご承知の通り震災で激甚災害に見舞われた横浜市が、特別議会で24学級規模・31校を鉄筋コンクリート製で再建することに決めたのだそう。
大正14(1925)年の三吉小学校を皮切りに、昭和5(1930)年の日枝小学校の竣工までの5年間で計画した31校全て完成を見たことから、「復興史の一片とせんために」発行が決まったという本がこれ。
おそらく ぼぉーっと生きてるので気付いてなかっただけなのかとは思いますが、復興建築図集は数あれど、小学校だけを取り上げたものは初見でした。もちろん31校全て学校ごとに異なる外観の写真を所収。教室や医務室、応接室、理科室、裁縫室などの校内施や運動場の写真なども。
復興建築に通底しているかに見えるモダニズムの精神は小学校建築にも生かされたのか、同潤会的な装飾を排した外観やレンガ敷風のスロープ、丸窓などはいかにも当時の「復興建築」の系譜に連なるものだと云えそうです。
所在地、坪数、建物、工事費詳細、運動場の児童あたりの坪数、平面図・配置図など資料部分も充実。とても行き届いた資料となっています。 

名取洋之助率いる日本工房からは、日本語による『NIPPON』が2種類発行されています。ひとつは対外広報誌として主に英語で発行されていた『NIPPON』の日本語(訳)版。もうひとつは あくまで「日本国内の文化機関誌として」発行した別ヴァージョン。で、画像3点目は別ヴァージョンの方の『NIPPON』で、昭和13(1938)年の第1巻第2号が入荷しました。
横に長い紙を綴じ込むことで広告スペースにあてる、縦1/3を残して2/3を切り落とすなど、『コマースジャパン』を彷彿させる実験的な部分も多く、誰の仕事かと思ってみると、河野鷹思。亀倉雄策のクレジットあり。なかでも表紙は河野鷹思が担当しています。
最もよく知られている対外広報誌『NIPPON』との一番の違いは記事部分の充実にあって、井伏鱒二、矢田津世子、三岸節子、神近市子、林謙一、佐藤惣之助、岩崎昶、飯島正などが執筆、カットではブブノワや西脇マジョリーといった名前も見られ、そのほとんどが当誌のための書下ろしと見られます。
文化機関誌を目指しながら、しかし内容的に見ると戦時色は強く、銃後婦人論、対外宣伝・宣伝政策に関する論考にテキストの多くのスペースを割いています。
“日本工房による『NIPPON』日本版”と云うと何だか冗談めいている気もしないではありませんが、現在までのところ確認できているのは僅かに2冊だというこの1冊、珍本稀本に違いなさそうです。

■今週はこの他、半革装の19世紀末~20世紀初めの洋書カーゴ約1/2台分イタリア他海外客船会社の戦前のパンフレット4点、タバコのパッケージを中心にチケット類などをきれいに貼り込んだ戦前の渡航者によるスクラップ帖などが来週木曜日に店に入ります。 

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