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19/03/23 ナム・ジュン・パイクで海藤日出男旧蔵品入荷は続く。そして追記も続く。

■深夜3時をまわってようやく文字部分を書き始めましたが、いやはやもう私のおつむからはいくら振ってみたところで何も出てくる気配なく、商売に結び付かない事案に追われたこの一週間のツケは大きかったようであります。頭まわらないくせに、いまどき真っ先に黙殺される長ったらしい一文だけは書けるというのも考えものではあります。一体何やってんだか。と、ぼやいていても仕方ないので。
兎にも角にも今週の新着品より。

1点目は今週またしても市場に現れた海藤日出男の旧蔵品より、落札第一希望に狙いをつけたナム・ジュン・パイクの自筆書簡等3点を無事手に入れました。
ナム・ジュン・パイクはご存知のように「ビデオアートの父」と呼ばれるアーティストで、フルクサス等現代美術はもとより、現代音楽との関りも深かった人。ニューメディア・アートの草分け的な人物です。
画像上方に置いた縦長の図版は同じ紙モノの表と裏で、1978年にフランスはパリのポンピドーセンターで上映された「ジャルダン・ビデオ(jardin・videos)」のポスター兼パンフレット。ポンピドーセンターは1977年の開館ですので、会館間もなくのことになります。
私が初めてパリに足を踏み入れたのは1980年代の半ばのことで、この当時、ポンピドーセンターに隣接するパリ中央市場跡はまだまだ工事の真っ最中。メトロの駅に続くショッピングモールの一部が開業していたものの、地上はどのような景観になるのやら、まだまだうかがい知れなかった当時のことを思い出しました。
工事現場特有の殺伐とした風景の向こうには、内燃機関=体内器官をむき出しにしたような意匠のポンピドーが聳え、その館内に並んだブラウン管テレビ( ! )には実験的なビデオアートが繰り返し流れている …… 古いものと先端とが入れ子状に併存するその風景は、1980年代に流行した“懐かしい未来”そのままだったのではないかと、そんなことを思いました。
ポスター兼パンフレットの表には「Kaido」「Paik」、裏側には「海藤先生」「Paik」「白南準」とナム・ジュン・パイクの自筆入り。いずれもダーマトと青色と一部赤色を使って書かれています。

画像下方の二折りDM状の印刷物と、この印刷物と同じギャラリー名入りのレターヘッドを使った書簡は1980年、ギャルリー・ワタリで開催されたナム・ジュン・パイクの個展「VIDEAいろいろ」の折のものと見られ、DMはダーマトのブルーで書かれた「白南準」の署名入り。書簡は「海藤先生」宛ての2枚で、音楽評論家の丹羽正明の名前が出て来る他、ギャルリー・ワタリで“テシガハラへの敬意”を展示しているので「おひまがあれば…」と書いています。こちらは終始ペン書で、「白 南準」「Nam June Paik」の二種の署名入り
ポンピドー1点とワタリ2点での分売を予定しております。

■ただいま午前4時30分。これからの作業はさすがに回避したいため、昭和14(1939)年『日独青少年団交驩事業』関係の3冊子については本日中に追って追記いたします。
しばしお時間をいただけますようにお願い申し上げます。悪しからず <(_ _)>
 

 

19/03/16 プロパガンダ2題 イタリア・ファシスト党とチエコスロバキアのスバルタキアード

■20世紀、人間はよくも悪くも、それまでの時代にはなかったたくさんの事物を発明し完成させました。プロパガンダもまた、そのひとつに数えてよいのではないかと思います。20世紀の視覚的分野を扱う小店としては避けて通れない、と云うよりもむしろ、きちんと提示しておきたいと思うテーマのひとつです。
こうした前提は、とりたてて説明するまでもないものだと思っていたのですが、最近になって考え直すようになりました。
直接的なきっかけは昨年の11月にSNSに投稿したヒトラーがらみのファシスト党プロパガンダ書籍をめぐる、古い友人からの書き込みにありました。その友人はいま海外で生活しているのですが、近しい関係にあったドイツ人の左翼的思考への反発から、ナチスに対する好奇心が強いのだと云い、日本ではナチスがらみの商材を扱うのに規制はないのかと尋ねてきたのです。
非常に深く考えさせられました。
こうしたものを扱う小店なりのスタンスを、一度きちんと説明しておくべきでところにきているのかもしれないと思いました。 
次の印以下は、その書き込みに対するメッセージとして、数時間だけ公開したものの一部です。
 
新着品は、1938年、イタリア・ジェノヴァの月刊広報雑誌『GENOVA』の「与党ファシスト党凱旋訪問」大特集号と、1955年、チェコスロバキアで開催された第一回スパルタキアードの記録写真61点より。
「スパルタキアード」についてはGoogle先生が詳しくご教示下さいますので、ご興味ある方は一度ケンサクしてみて下さい。
それにしても、イタリアのプロパガンダの洗練には毎度驚かされ、ナチスと戦後社会主義国家=全体主義の求める「健全」(民族の祭典 vs スパルタキアード!)の何と似ていることか!
来週の新着品は「日独青少年団交驩会」事業報告関係冊子とプロパガンダが続く予定です。
 
左翼プロパガンダとナチスプロパガンダとは表現がそっくりだったりして、すぐれた表象というのは、実によく、そこにある精神をあらわすものだと感心します。実際、日本の『FRONT』という戦時プロパガンダ雑誌は、ソ連の『建設中のソ連邦』をお手本にしたと云われています。どれも自分たちが一丸となって進む先に理想的な社会が、新しい時代が拓けるのだと、何の躊躇いもなく謳いあげています。

私は、人類が犯す愚行のひとつは、政治がその権力によって「単一」のユートピア像を「強制」することだと考えていますが、人々がひとつにまとまった社会こそ理想の社会であり、そのためには強制もやむを得ないと考える人が居てもおかしくありません。
人の考えに枷をかけることはできないし、例えできたとしても、余程のことでない限りそれはしてはいけないことです。
人の考え、価値観は、多様である方が良い。
そのためにも、人の歩んできた歴史は、できるだけ多くの事実を、或いはかすかな痕跡であれ、できる限り隠すことなく、残しておくことが大事だと思っています。後に続く人たちが、ものごとを考え、判断を下すうえで、ひとつでも多く、多様なヒントが得られるように。多様な考え・価値観が、過去によって支えられ 或いは 赦されるように。
 
古本屋にできることは、過去の事実を、あるいはその痕跡を、できる限りありのまま差し出すことだけです。
 
同じものをみても、思うところ必ずしも一致しないのもまた当然のことです。
違いがあるからこそ対話し、考え、想像することが必要なのだと思います。
 ご来京の折には是非時間をつくって小店にお立ち寄り下さい。叶えば何と30年以上の時を経た後の再会です(何と長い歳月が流れたことか!) 。
その日を楽しみにお待ちしております。 
10.11.2018
 
■関係がないようで関係がある今週の2篇。
『掃除で心は磨けるのか――いま、学校で起きている奇妙なこと』
https://twitter.com/chikumasensho/status/1102438802377723904
「迷惑をかけた」の半分以上は
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00011/?P=5 

 

19/03/09 ジャパンサーチ試験版公開! 上がるか下がるか明治期木版刷図案集の評価!?

■ここのところ何度か、「ジャパンサーチ」の試験版が今年2月27日に公開されたというニュースがSNSを通じて届いたので、早速指定されているアドレスをのぞいてみました。アドレスはこちら↓
https://jpsearch.go.jp/
 
サイトのトップページには、「日本が保有する多様な分野のコンテンツの所在情報を提供し、オープンに利用可能なデジタルコンテンツを検索できるサービスです。試験版では、現在38データベースから16,982,820件のデータを検索できます。2020年までの正式版公開を目指して、連携データベースを増やし、利活用を容易にするための機能を整備していきます」とあるではないですか!!!
トップページに置かれた動画や図版の出来も相まって、「これでようやく日本も欧米並みの文化系データ・サービスができたか!」と喜んだの束の間、我々古本屋の仕事と関係の深い古書について云えば、誘導された先である国立国会図書のデジタルコレクションは従前からの雑駁な仕事を修正する気配もないまま、正直、これで胸を張られてもなあというレベルのものが。
例えば上のアドレスからトップページに移り、虫眼鏡のアイコンをクリックして「海路」と入力し、試しに検察結果までご覧なってみてください。また検索ワードに神坂雪佳でも古谷紅力でも、芸艸堂、山田芸艸堂とでも入れ、片っ端から見ていっても良いでしょう。さて、果たしてこれで、本当に使いものになるのか…。
とくに明治期日本の木版刷の図案集については、スミソニアン博物館などアメリカの公共機関のデータベースの方が余程、数段、全然、優れていると云って間違いありません。いいのかこれで。

この残念な状況によって、古本屋の仕事が成立するというのも皮肉なものですが、今週の新着品は明治期に陸続として発行された木版刷の図案集のひとつ、この分野の代表格ともいえる『美術海』(図案1点目)と『新美術海』(図版2点目) を選びました。新入荷したのは『美術海』3冊、『新美術海』10冊の合計13冊です。
今回入荷した『美術海』と『新美術海』とでは、時間的にはたかだか6~7年のひらきですが、前者から後者へ移行して以後、古典的な日本の図案から脱皮して近代的図案へと転換していく様子は“飛躍的”とでも云いたくなるものであり、大きな違いとなって現れていることが分かります。
ちなみに、国立国会図書館のデジタルコレクションと比べ物にならないデータアーカイブはこちら↓。スミソニアン博物館の『美術海』
https://library.si.edu/digital-library/book/shinbijutsukai1
日本人の口から発せられる日本スゴイの言葉が何と薄っぺらなことか。とほほ。
 
今週読んで考えさせられた三つ。感じとったものを深く考えた上で書かれた文章です。
 
反日とは何か
http://allatanys.jp/blogs/7958/?fbclid=IwAR1m0hvNJR6LFJmVkT6DcGD6NNKBoLrgpZvrt3IoXnRN-BZzWqlQ58FYvTc
 
私も会田誠先生の講義を受講しましたが…?
http://artwriter.hateblo.jp/entry/2019/03/02/223031?fbclid=IwAR0xDpDwLs9TACC8f_Z6WxsajqNMJjbEgdnFIG1XuU2wUW8ZrFTpJeG-zv8
 
そして今年もまた、3.11がめぐってきます。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=2080706845383142&id=100003315392866 

 

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