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18/02/10 絵封筒・図案貼り交ぜ・引き札と今週は木版刷が揃い踏み

■来週店は普段同様、火・木・土曜日で営業いたしますが、金曜日が出張となったため、新着品のご案内は1回お休みさせていたただきます。
また、今週は戦前のファッション関係、キモノ関係、肉筆漫画など落札したものの、少々読み込み もしくは下調べを要するもの多く、ここ数か月の間に入荷しながら、入荷をお伝えしないままできた商品からピックアップし、少々駆け足でのご案内とさせていただきます。悪しからずご了解いただけますようお願い申し上げます <(_ _)>。

あ。この1点だけは正真正銘の新着品、明日から店に並べる木版刷の絵封筒・ポチ袋23点の中から10点を選んで画像にしました。
絵封筒と云えば小林かいちが真っ先に頭に浮かぶかと思いますが、何しろ小店でも買えそうなものとなると かいち以外-何しろ高かったので買えず-、さくら井屋以外-何しろ人気があったので買えず-ということになり、必然的なあまりピリッとしないデザインのものが多くなり、入札もせずスルーするのが常でした。 

がしかし、今回のはご覧の通り。とくに封筒はどちらかと云うとフランスの図案集に出てきそうなデザインに、これはと思っての落札。
23点の中から画像に撮るものを選んでいくと、1点を除き封筒・ポチ袋とも、〇にYの字のマークが入っているという結果に。当然、「誰だYって?」というギモンが兆すわけですが、キーワード検索すれども画像検索にかけようともヒントは得られず。
あきらめて再度状態をチェックしようと裏に返してみたところ、Yマークのある商品数点の裏に「伊東屋」のハンコがついてるのを発見 !  Y氏=伊東屋さん御用達のイラストレーターなのかも知れません。
とはいえいまは土曜日の午前2時。伊東屋さんに電話してお尋ねするなど確認の手立てのあるはずもなく、従ってこれ以上のコメントも書けず「以上おわり。」というこの薄っぺらなご紹介に我ながら呆気にとられている現在であります。

■ここから先の2点は昨年末に入荷、ご紹介の機会を逸していたものから。どちらも少しは動いてくれても良さそうなのですが。 
1点目はここのところ急騰&高止まり傾向のある木版刷図案集から派生したもの。明治~大正初期の木版刷の図案集から、自分で気に入った図案を切り抜き、和紙を台紙にして貼り付けてつくったものと見られます。貼り交ぜされている図案から見て、旧蔵者は木版刷の図案集を少なくとも4~5冊はバラスか切り抜くかし、やはり木版刷の千代紙をやはり4枚前後に鋏を入れたものと見られます。

この手の図案集が古本屋などで安く扱われていた時代があったのか、いずれにしてもいまとなってはもう絶対にあり得ない超ゼータクな貼り交ぜです。ちなみに シート(台紙)のサイズは38×51.5cm。このサイズ感もなかなかゼータク。

小店のお客様であれば大方ご存知のはずの引札。念のためwikiを引用しておくと、「引き札 、または 引札 (ひきふだ)は、江戸、明治、大正時代にかけて、商店、問屋、仲買、製造販売元などの宣伝のために作られた広告チラシである。広告の歴史資料としてだけでなく、独特の色合いと大胆な図柄から美術品としての価値もある印刷物として蒐集の対象ともなり、各地の博物館に所蔵されるほか、展覧会も開かれている。」とのこと。
しかし小店、多くの場合、引き札にはあまり食指が動きません。何しろあのキッチュな色柄 - とくに頬を真ピンクに染めた美女だとかヘタな漫画のような大黒さんだとか - が苦手で。
ところがこの一口は同じ引き札でも別物。キッチュからもチープからも距離を置いたデザインばかり。画像にとったのは、鶴を真正面からとらえていたり、カラスをモチーフに使ったり、富士山と文字のデザインがモダンだったり、波頭の表現がダイナミックだったり等々、なかでもひときわ小店店主の目をひいたものです。
こちらも32×49cmと比較的大判で見栄えは上々。
画像の分と併せて20点ほどがすでに店のキャビネットに収まって、お客様をお待ちいたしていております。<(_ _)>
 

18/02/03 木版上のモード … 神坂雪佳『海路』明治期初版と昭和初期・帝国劇場のプログラム

■今週は最初にお知らせをひとつ。
本日2月3日(土)は所用のため、店の開店時間を17時半前後とさせていただきます。どうかご注意下さい。
来週はいつも通りの営業となります。ご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

各種工芸分野に応用可能で、海外輸出にも適した優れたデザインを提供すべく、明治期に盛んにつくられた木版刷の図案集の価格高騰が、とどまるところを知りません。この相場急騰は大方、と云うより間違いなく、海外の需要に支えられており、海外でも名の知られた作家や版元のものとなると、「浮世絵か?」と思うような価格になるケースも頻出しています。
その代表的な意匠家=明治時代のグラフィック・デザイナーが神坂雪佳であり、代表的な版元が京都の芸艸堂です。
2001年、フランスのハイブランド、エルメスが同社発行のPR誌『LE MONDE D`HERMES ( ル・モンド・エルメス )』の表紙と巻頭記事に神坂雪佳の作品を採用したことが大きなきっかけとなったものと思われますが、以来、ゆるやかに上昇してきた価格がここにきて急騰した背景には、日本の木版刷図案を積極的にデータ化し無料で公開する動きが海外の博物館・美術館にさかんに見られることや、国や言語を超え、趣味嗜好や必要に応じて、視覚的情報を摂取・収集できるinstagamなどの影響があるのではないかと思います。
今週ようやくご紹介にこぎつけた神坂雪佳の『海路』は明治35(1902)年、芸艸堂から発行された初版。作家・版元・刷りの三拍子揃った良品ですが、非常に残念なことに表紙・裏表紙がありません。序文・奥付は残っているというのになぜ表紙まわりだけ失われることになってしまったのか? 本文木版図案部分はシミもシワもなく状態良好なだけに、この謎はとけそうにありません。
『海路』は前年の1901年、“グラスゴー国際博覧会 (Glasgow International Exhibition) の視察を目的とし、世界各地の図案の調査を兼ねて渡欧(wikiより)”する雪佳が、往還の船上、無聊を慰めるべく飽かず眺めた波が変幻自在に見せる形象を図案化したものだとか。
いまから100年以上前の図案の中には、日本の古典的な文様に洗練を加えたようなものから、当時欧州で大流行していたアール・ヌーヴォー調があり、はたまた まるでCG処理したかのような現代的なものまでと、その手腕には目を見張るばかり。雪佳は日本的なデザインの魅力を、日本人でありながら外国人の目で見ることができた人と云えるかも知れません。

表紙がないからといって格安かといえばさにあらず。いやはや随分以前に一度落札した傷み本と比べても優に3倍。自分で入札しておいて何ですが、どうなってるんだという価格でした。
今日までご紹介が遅れた背景には、落札価格から考えて、思い切って綴糸を切って木版1枚ものとして販売するか、表紙以外の揃いで販売するか判断しかねていたという事情がありました。
改めて冷静に眺めた結果、当面バラすことなく現状のままでいくことにいたしました。何しろ雪佳の転機ともなった渡航体験を色濃く映した『海路』です。全点揃っていることに意味はあるはずです。是非、画像検索してみて下さい。元版はそうそう出てくるものではないようですよ。

■『海路』から時を経ることおよそ30年。昭和初期ともなると木版という日本の伝統的手法を使いながら、まるでフランスの高級婦人誌のようなデザインの広告なども登場するようになります。例えば帝劇の海外歌劇団・演奏家の来日公演のプログラムに出稿した御木本の広告にはちょっと驚きました。
大正末~昭和初期の丸の内・帝国劇場の海外公演プログラム13点が入荷しました。御木本の広告はこのうち昭和5(1930)年の2点に掲載されています。画像真ん中のオレンジ色とブルーで描かれた軽快な曲線で構成されたデザインもなかなかモダンです。伴野商店のパテベビーの広告がまた高級婦人誌のタッチで揃ってモダン。
しかし、この場合、肝心なのは公演内容でありまして、主だったものを挙げますとフリッツ・クライスラー(大正12=1923年)、エフレム・ジンバリスト(昭和2=1927年)、ジャック・ディボウ、セシリア・ハンセン(昭和3=1928年)、舞踊のアルヘンティーナ(昭和4=1929年)、カーピ伊太利大歌劇団(昭和5=1930年)など。さらに。昭和6(1931)年にはサカロフ夫妻が来日、第一部・第二部併せて17の演目がクレジットされています
いずれも写真など画像はひとつもありませんが、手間暇かけた木版刷や欧文組版、広告に至るまで、いまは名前も分からない当時の人たちによる、精いっぱい背伸びしての仕事であったのだろうと思います。
こちらは1点ごとにバラ売りいたします。

この他、『考現学』『考現学採集』、明治初期の建築・建築装飾関係の和本、1930年代フランスのファッション雑誌と戦後1950~1960年代の海外ファッション雑誌4本分(およそ70~80冊)などが来週木曜日には店に入ります。



 

18/01/27 安部公房の「紙片(かみくず)のこと」のこと と マティスとカルリュの紙モノ(?)のこと

■先週金曜日は更新を予告なしにさぼってしまい失礼しました。風邪をひいたわけでもインフルエンザで倒れていたわけでもなく、大雪の日に転倒することもなく、お陰様で「〇△は風邪をひかない。」を地でいっております。ご心配下さった方には心よりお詫び申し上げる次第です。
そうこうするうちにもう1月も最終週。もたもたしてるとまたあっという間に12月がやって来てしまいそうです。さあ急げ !

下ごしらえと下調べを要するブツを後回しにし、かつまた、今週落札したもののなかでとりあえず珍しいものをひとつと云ったらこちらになるかと思います。戦後続々と立ち上がった芸術系の運動体のなかで、若き表現者・批評家の集まりとして注目された「世紀の会」の研究資料として7冊の発行が確認されている小冊子『世紀群』の内の1冊、『世紀群2. 紙片(かみくず)』です。
「世紀の会」創設時からのメンバー・鈴木秀太郎による小説で、やはり創設時からのメンバーである大野齊治による装丁。本文ページ内に貼り込まれている2点の多色刷木版画もまた、どうやら大野によるもののようです。

安部公房の「魔法のチョーク」や「事業」、関根弘の第一詩集「沙漠の木」などが並ぶ『世紀群』のなかで、『紙片』は地味な存在ではありますが、わら半紙に孔版刷、背もないような体裁の『世紀群』としては珍しいことに、あまりにコンディションが良いのに驚いて手にしました。してみると、中に何やら小さなペラが挟まっています。『紙片』についてはこれまでにも数度、市場で目にしたことがあるように思うのですが、挟み込みの存在に気付いたのはこれが初めてです。
そもそも『世紀群』がB6サイズほどとごく小さなサイズなのに、この挟み込みはさらにその半分という小ささ。刷色が薄くて読みにくいその表紙をよく見れば、「『紙片のこと』 安部公房」とありました。
『紙片のこと』はB5両面孔版刷の上、四つ折りにしたもので、痛んでいるのが当たり前のこの体裁とこの紙質としては、望むべくもない完璧な状態。『世紀群』にはどれも奥付がないのに対し、『紙片のこと』の文末には「(1950・10・28)」という記載があるのもミソ。『紙片』の発行も同時期と見られます。表紙と裏表紙に刷られた奇妙なカットもいい味を出しておりまして、表紙のカット下方に汚れのようなものが見えるのは、汚れではなく茶色でわざわざ彩色している部分。芸がこまかい。
「世紀の会」とその関連事項については、早稲田大学・鳥羽耕史教授の研究や山口勝弘のアーカイブ、桂川寛のインタビューなどがネット上で公開されており、かなり多くのことが分かります。
小店が初めて『世紀群』を扱ったのはまだ大岡山に店があった当時の五反田展の目録でのこと。瀬木慎一の翻訳とあともう一冊、いずれも芸術論だったように思うのですが、わら半紙に孔版刷、奥付もないこの冊子については調べるすべもなく、「夜の会」も「世紀の会」も知らないまま、それでも1冊4000~5000円と勘だけを頼りに精いっぱいの値段を付けたことを覚えています。注文を下さったのは当時から美術古書店としては随一と云われた書店のご店主。後にお葉書を下さって、自店の目録に載せたら“その筋”のお客様に売れたこと、それだけ「商品として確かなものでした」と書かれていたことを思い出しました。自分の見る目に自信を持ちなさいという励ましのメッセージだったのだと思います。それもはや18年ほど前のことになりましょうか。20年も経たないうちにかたや店主はすれっからしとなり果て、かたや情報のありかや調べ方や売り方や買い方やあらゆる場面で、古書をとりまく世界もまた大きく変わったものであります。

■傷み本とは云えマティスだし。王道美術書VERVEだし。しかもムルロー工房のリトグラフだし。買えっこないと思っていたのが、何故か落ちてきた『VERVE Nos 35-36 DERNIERES OEUVRES DE MATISSE 1950-1954』。1958年発行。
自宅に持ち帰ってみてよく見れば、綴じ糸を切った部分あり、さらに糸を抜いたところまであり、部分的に簡単に手を入れたくらいでは本としての体裁に戻すのが困難ではないかと…。
もう1冊、『VERVE No.13 De la Couleur H.M.』とマティスは2冊一緒に入荷。こちらはこちらでカヴァーに難があり。
ただいま現在までのところ、悩みの種がまた増えたような気がしております。

今週はこの他、3点目の画像にある額装済みのポスター2点 (うち1点はご存知ジャン・カルリュ!フランスのビールメーカーSPATENBRAU社の!)、お馴染みの『考現学』と『考現学採集』大正期の会計関係の台帳明治期の建築関係の和本などが来週木曜日には店に入ります。
神坂雪佳の木版刷プレート(『海路』より)と、こちもまた木版刷の大正末~昭和初期・帝劇 来日アーティストによる来日公演プログラムなどはできれば来週の更新でご紹介するべく鋭意調査中。しばしお待ちを。








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